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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉田あや
59
明文化できない時間がふとした瞬間文字へと変わり、スイッチがはいったかのように降り注ぐ。全てのものがきれいに見えるようになった母、文字が少ない田舎の夜、賑やかな声を思わせる看板たち。毎日の中で起きる小さな変化や想いの流れをコマに滲ませるのが絶妙に上手いオカヤさんの、余白の雄弁さに感嘆する。特別でも崇高でもなく、ただそこでものすること。少ない言葉で核心をついてくる「言葉」を大切にする人達がとても素敵で、この中に住みたいと思う居心地の良さと、終わらない世界に胸が広がる。2020/02/19
akihiko810/アカウント移行中
19
3巻完結まで。警備員のバイトをしながら、純文学の小説を書く小説家の静かな日常を描いた作品。7.5/10点 息をするように小説を書くことが、日常生活の中に組み込まれている小説家の、丁寧で静かな日々を描く。小説家といっても奇人変人でもなく、我々と同じ「普通の」日々を生きる人なのだと言うことが強調されている。ある日ふと書けなくなったりするが、日々を丁寧に生きていく中でまた書けるように戻っていく。丁寧な日常の中で「ものする」人を描いた良作2022/10/29
さすらいのアリクイ
9
小説家のマンガ。このマンガは何も起こらず、日常を満足して暮らす人達のマンガに見えるんです。表面だけを見ていたら。しかしマンガの表面をじっと見続けていると登場人物達の焦りとか気まぐれ、執念などの気持ちや意識が浮かんできたり消えたりして、そこにドキドキしたりどきっとする。静かな空気感の世界の中で生きる普通の人達が何かを抱えていたり、やろうとしていることが描いてある。分かりやすい言葉でこのマンガを言い表せたら楽なのですが、あえて断言せずに時々このマンガを思い出して読んでこの感覚を楽しんだ方が良いのかもなと。2019/07/25
allite510@Lamb & Wool
7
工事やヘリコプターの雑音にまみれ、埋め尽くされる看板の文字たちの中を、ピクニックするような時間と眼差しで生きる人々がとても魅力的だった。上の世代からは「切実なものがない」とか言われながらも、彼らは彼らなりの方法で彼らの自然と折り合い、楽しみ、何かしら「もの」しながら過ごしている。意味のない文字列を見つけて笑い、救われ、その場ででっち上げた「嘘の意味」の優劣を競うゲームで遊ぶ。そうして文字と音と意味のあわいで彼らのピクニックは続くのだ。本は完結しても。ああ混ざりたい。2019/06/25
コリエル
4
完結。感覚的にはマルヒラくんに最後まで共感したな。彼は創作しないこともないので若干異なるが、小説や漫画を少し多めに読む人の大半が抱えている「ワナビ」的な自意識過剰さというかね。スギウラに関しては割合淡々とイベント消化が進んだという感じで、作家の書かずにはいられない衝動とか言葉にすれば陳腐になってしまうようで語りづらいところがある。作家や編集者たちがわりと変わったことをしているようでもあり、それほどでもないこの平熱さはけっこう好きだった。2019/11/24