内容説明
完成以降1300年、正史『日本書紀』の神話は不変ではなく、時代的な背景や為政者の思惑で大きく変化し続けてきた。たとえば中世において、太陽の女神アマテラスは、蛇体の神になり仏教を広める役割を担った。英雄スサノヲが地獄の閻魔大王とされたこともある。その変容は、「日本」という国の認識が、常に更新されてきたことを浮かび上がらせる。中世を起点に近現代へ、そして古代へ。壮大な受容史をたどる。
目次
プロローグ 『日本書紀』一三〇〇年紀にむけて
第1章 中世日本紀の世界へ
第2章 戦乱のなかの『日本書紀』
第3章 「日本紀講」と平安貴族たち
第4章 儒学者・国学者たちの『日本書紀』
第5章 『日本書紀』の近・現代史
第6章 天武天皇・舎人親王・太安万侶―『日本書紀』成立の現場へ
著者等紹介
斎藤英喜[サイトウヒデキ]
1955年東京都生まれ。佛教大学歴史学部教授。日本大学芸術学部卒業、法政大学文学部日本文学科卒業。日本大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門は神話・伝承学。『古事記 不思議な1300年史』(新人物往来社)で古事記出版大賞稗田阿礼賞、『古事記はいかに読まれてきたか“神話の変貌”』(吉川弘文館)で古代歴史文化みえ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
56
神話から始まる国の成り立ちを語る日本書紀は、様々に読み替えられて学者に批判され、各時代の政治的抗争に利用されるなど複雑怪奇な歴史を辿った。中世期にはトンデモ本さながらの解釈があったり、平田国学に強い影響を与えたとは知らなかった。しかも明治には国家神道成立に利用され、あげく戦後は無視されるのだから。そんな日本書紀が内容的には相矛盾する古事記ともども同時期に編纂された理由を探る最終章は、1300年も日本人をとらえてやまぬ謎の解明に挑んだ歴史ミステリの趣きすら感じる。ここが著者の最も書きたかった部分ではないか。2021/03/26
はちめ
10
著者もあとがきに書いているように、日本書紀は不幸な歴史書だ。本居宣長によって漢意だと貶められ、戦前に神格化されたことにより戦後においては研究に着手することさえ憚られた。そして編纂1300年の記念の年にコロナ禍に見舞われ、行われたであろう多くの記念行事が飛んでしまった。近年、考古学の進展により、特に天皇記の記述が歴史書として真実を伝えていることが明らかになっている。つい先日も京都で日本書紀に記述のある導水施設が発掘されたとのこと。日本書紀の復権を!☆☆☆☆#ニコカド20202020/11/14
はちめ
7
日本書紀が日本の歴史上どのように解釈されきたかという本なので、日本書紀には本来何が書かれているかという問いにはあまり参考にならない。ただ、中世において草薙の剣はヤマタノオロチの子供で安徳天皇に化身して取り返しに来たなどという説がまかり通っていたというのはちょっと笑える。 その後も平田篤胤のカルト的な解釈や国家神道による悪用など、日本書紀は適確な解釈に恵まれなかった。これからでも遅くないのでAIを使うとかして、研究者の方たちには適切な読みをお願いしたい。☆☆☆☆★2022/08/03
takao
2
中世での読まれ方2021/05/07