内容説明
『古事記』『日本書紀』をはじめ、日本古代の歴史書には、天皇(大王)として「即位できなかった皇子(王子)たち」の記事が多数残されている。これらの皇子たちの多くには、残念ではすまされない苛烈な未来が待っていた。彼らは、なぜ即位することができなかったのか。記紀の伝承時代から、律令制成立期、律令制下、さらには平安時代の摂関期から院政期にかけて、敗者となった皇子たちの政治的背景を探求し、日本古代国家の本質に背後から迫る。
目次
序章 伝承時代の王子―日本武尊など
第1章 倭王権の成立と王子
第2章 律令制成立期の王子(皇子)
第3章 律令国家と皇子
第4章 平安朝の確立と皇子
第5章 前期摂関政治と皇子
第6章 摂関政治全盛期の皇子
第7章 院政と皇子
著者等紹介
倉本一宏[クラモトカズヒロ]
1958年、三重県津市生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。博士(文学、東京大学)。国際日本文化研究センター教授。専門は日本古代政治史、古記録学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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宇宙猫
18
挫折。面白そうなんだけど、歴史背景は余りかかれず皇子達がどう排除されたかが書きならべられているのと、似た名前のうえ複数の呼び名があって混乱して頭に入ってこなかった。ラノベ古事記が分かり易くて良かったな。2022/11/20
びっぐすとん
17
図書館本。神話の時代から院政期までの「天皇になれなかった」皇子たちの人生。飛鳥、奈良時代は身内同士の殺し合いで、天皇になれないのは「殺されちゃったから」ということも往々にしてある。なまじ優秀だと殺されちゃう。実際に手を下さなくても異母、同母問わず死に追いやり怨霊を増産した平安初期を経て摂関期、院政期には皇族からも外され出家させられる皇子が続出。天皇になれるのはただ一人。皇子、皇女とはいえ安穏とはいかない人生。盗賊に殺され犬に喰われた皇女もいるなんて。「世が世なら」と臍を噛む思いの皇子が沢山いたことだろう。2020/07/25
崩紫サロメ
14
必ずしも「悲劇」に焦点を置いたものではなく、「即位できなかった皇子」に着目して、日本の皇位継承のメカニズムを説き明かすというものである。即位できなかった皇子がどのように遇されるかは本書で扱われる記紀時代から院政期で変わってくる。何故記紀から始まるのかといえば、そこに描かれる即位できなかった王子に託した思いを読み取ろうとする試みで、後の時代でも早良親王の「怨霊化」のように「敗者の語り継がれ方」も注目に値する。2020/02/20
六点
13
聖徳太子がなぜ、皇位に就けなかったか。在原業平が何故、歌物語の主人公たりえたか?等という事に関心がある人は多いであろう。余りにも形而下的な理由にがっかりするのも良い。血統原理に基づき皇位継承を行う日本に於いては乳幼児死亡率の高さの要求する所により、大量に皇子を生産せざる得なかったわけである。飛鳥/奈良時代の傍流の皇子たちの最期の悲惨さに比べ、平安時代になると例外を除き天寿は全うできるようになった。歴史は進歩を示しているというべきであろう。系図を行きつ戻りつしながら読む煩雑さを超える歴史の妙味を味わった。2020/02/03
ユウユウ
8
一人一人の話が濃厚2022/07/31