内容説明
江戸初期の屏風には珍しい、デフォルメされた江戸湊とそのウォーターフロントの景観。元吉原の遊郭、かぶき者の喧嘩、日本橋界隈や木挽町の茶屋・歌舞伎小屋・湯女風呂の賑わい、おびただしい数の水辺の船遊びなど、この屏風には遊興・歓楽的な雰囲気に満ち溢れている。その要の位置に一邸だけ描かれた武家屋敷、幕府水軍の御船手頭向井将監邸。これらはなぜ描かれたのか。その歴史推理から注文主・制作年代を初めて解明する。
目次
1 歴博本「江戸図屏風」をめぐる近年の動向―新たな読解へ
2 出光本「江戸名所図屏風」の研究史
3 動物で浮かび上がる景観年代―運送手段としての馬と牛
4 浅草三十三間堂の創建―景観・制作年代の上限は寛永二十年
5 「江戸名所図屏風」の全体的読解へ
6 「船遊び」と幕紋の船―船の読解
7 向井将監家の人々―注文主を絞り込む
8 十七世紀中頃の「かぶき者」―人物表現と風俗の読解
9 注文主―「かぶき者」の趣味と願望
著者等紹介
黒田日出男[クロダヒデオ]
1943年生まれ。東京大学名誉教授・群馬県立歴史博物館名誉館長。文学博士(早稲田大学)。東京大学史料編纂所教授・同所長・同附属画像史料解析センター長などを経て、立正大学教授・群馬歴博館長などを歴任。専門は、日本中世史と絵画史料論・歴史図像学など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメヲトコ
2
出光美術館所蔵の江戸名所図屏風についての謎解き。描写内容の仔細な分析から、注文者とその背景を鮮やかに推理していく過程は相変わらず面白い。それにしても毎年1冊本を出しますとは、凄いエネルギー!2015/08/07
Wataru Hoshii
2
黒田先生の江戸図屏風読解シリーズ第3作。とりわけ面白い屏風だけに、わくわくしながら読んだ。いつも出光でこの屏風をみるときは、生き生きと描かれた風俗描写を眺めるうちにどんどん時間がたってしまうのだが、その描写を読み解くことで、向井五郎左衛門正俊という注文主にたどりつく推理は、いつもながら緻密でスリリングだ。次にこの屏風をみるときの見方が絶対に変わってくる。次作は舟木本洛中洛外図だとか!なんと来年が楽しみなことだろう。2014/12/29
Meistersinger
2
出光本と呼ばれる屏風の注文主と目的は何かに迫った一作。描かれている内容(かぶき者への愛着)と絵の作成時期との照合から「向井五郎左衛門正俊」と推定している。絵に描かれた内容については建物の建設時期(建設以降にしか絵にされる筈がない)や運搬用の牛の使用開始時期から製作時期を絞りこんでいる。また人も髷の形など対象種別ごとに総数を数え上げている。金雲は遠近や高低、場面転換・時間経過そして装飾といった機能をもつということから、「何処と何処が直結されているのか?」と推定している。2014/12/16
onepei
1
満足。しかし家紋がなぜ上下さかさまに描かれたのかについての考察がほしかった。2014/10/21
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- 和書
- 未婚じゃなくて、非婚です