内容説明
五弦琵琶は、世界中でただ一つ正倉院にのみ実物が伝わる。螺鈿が施された異国的な意匠のこの琵琶は、天平人の耳にどう響いたのか。これらの楽器のほか、遊戯具として伝わった囲碁・双六・投壷、「しきり」としての幔幕・帳・屏風など、のちの工芸美術や文化の礎となった正倉院宝物の数々―。東大寺に収められた聖武天皇遺愛の品から始まるこれら正倉院宝物の受容と展開の歴史を、その魅力とともに解き明かす。
目次
1 日本の古代国家と正倉院宝物(正倉院宝物を考える視点;七世紀初頭から八世紀前半期の国家的課題 ほか)
2 正倉院宝物・宝庫の成立(正倉・正倉院とは何か;『国家珍宝帳』に所載の宝物 ほか)
3 正倉院宝物の素顔(漢字・漢文;しきり ほか)
4 正倉院宝物の受容と展開(『国家珍宝帳』から見た宝物献上の意味;『種々薬帳』から見た宝物献上の意味 ほか)
結びに代えて―奇蹟の正倉院宝物を守り続けたもの(開閉封の儀式;奇蹟の宝庫―延焼を免れる ほか)
著者等紹介
米田雄介[ヨネダユウスケ]
1936年兵庫県生まれ。大阪大学大学院博士課程単位取得退学。文学博士。元宮内庁正倉院事務所長。県立広島女子大学・神戸女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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びっぐすとん
9
図書館本。先日読んだ正倉院の本は写真が多くて目で楽しむ本だったが、こちらは正倉院自体の歴史や宝物の来歴、時代背景の説明がメインで勉強になった。1200年以上前の宝物が建物ごと残っているのも奇蹟なら、その後の出入庫の記録が残っているのも奇蹟。戦乱期にも大掛かりな盗難に合わなかったなんて信じられない。部屋の仕切りやベッドなど、あまり知られていない奈良時代の暮らしの一部が垣間見えて興味深かった。都が奈良から京都へと移り、政治の中心ではなくなったことが、戦乱や火事などの災害に巻き込まれずに現在まで残れた理由かな。2018/11/06
SK
2
257*七世紀以前の漢字・漢文の受容、敷物、音楽世界、遊戯具など、宝物そのものからもっと広く背景について解説されている点が特徴。2021/10/10