内容説明
江戸城内をゆく山王祭礼が描かれた「江戸天下祭図屏風」。紀伊徳川家上屋敷が大きくクローズアップされたこの屏風は、いつ、誰が、何のためにつくったものか。描かれた建物や人物、画面構成などを絵画史料として分析・読解し、つくられた時期は明暦大火後、折りしも紀伊徳川家が慶安事件(由比正雪の乱)の嫌疑を受けていた頃と推理する。さらに時代背景と伝来などの推理から、屏風に秘められた謎をスリリングに解明。
目次
前口上 描かれた江戸の歴史推理
第1幕 江戸図入門―寛永江戸図の版行はいつ頃か?
第2幕 歴博本江戸図屏風をめぐる対立
第3幕 再発見された江戸天下祭図屏風
第4幕 天下祭りと見物人
第5幕 紀伊徳川家上屋敷と屏風の主人公
第6幕 徳川頼宣と慶安事件・明暦大火
大団円 「江戸天下祭図屏風」は語る
著者等紹介
黒田日出男[クロダヒデオ]
1943年生まれ。東京大学名誉教授。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。東京大学史料編纂所教授・所長などを経て、現在、立正大学教授・群馬県立歴史博物館館長。文学博士。専門は、絵画史料論・歴史図像学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメヲトコ
7
2010年刊、刊行時以来の再読。メインとなるのは個人蔵「江戸天下祭屏風」で、その前段として寛永江戸図や歴博本江戸図屏風も俎上に上がります。黒田節というべきか、先行研究をバッタバッタと薙ぎ払う書きぶりが読みどころ。2020/09/04
takao
2
ふむ2023/11/27
chang_ume
2
絵画史料論の手引きともなる一冊。分析・解釈の道筋が開示されています。とりわけ近世町絵図の系譜論が興味深い。転写過程の不整合箇所などを通じた史料批判は、他事例の町絵図分析にも役立ちます。ただし、論者へのオープンな批判姿勢の一方で、著者の主張部分も結構荒っぽいですが。そこも含めて大家の論法を楽しめばいいのかなと。ちなみに書題は歴博本『江戸図屏風』を思わせますが、実際の分析対象は『江戸天下祭図屏風』。2017/02/14
Wataru Hoshii
2
絵画史料論者、黒田さんの2010年の著作。本書には寛永江戸図や歴博本江戸図屏風についての考察も含まれるが、本題は「江戸天下祭図屏風」の謎解きだ。いつもと同様、研究史を整理した上でこれまでの学説を批判的に検討、史料をもとに作品成立の真相に迫っており、極めて説得力がある。日本絵画は絵画作品としての美的分析と同時に、依頼者や注文意図、享受する人と享受の場などの探究が不可欠だという趣旨に深くうなずく。予定では、黒田さんは今年「江戸名所図屏風」についての著作を出すはず。「江戸図屏風三部作」の完成を楽しみに待ちたい。2014/01/18
kazuya
1
「江戸天下祭図屏風」と、それに合わせて「歴博本江戸図屏風」および諸々の江戸図について、考察されている一冊。 恥ずかしながら「江戸天下祭図屏風」は初めて知ったが、相変わらずの謎解きでとても面白かった。2022/12/27
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