内容説明
自然主義作家として名を残す国木田独歩は、日露戦争の戦況を伝えたグラフ誌で一時代を築いた有能な編集者であった。独歩のもとには、日夜、友情で結ばれた画家や作家が集い、日本初の女性報道カメラマンも加わり、独歩社を結成。報道写真雑誌を開花させた彼らに、活気ある明治の時代を読む。
目次
序章 独歩社という「自由の国」
第1章 ジャーナリストとしての出発
第2章 『東洋画報』誕生
第3章 戦争報道メディアへの展開
第4章 近事画報社の黄金期
第5章 独歩社の旗揚げ
第6章 「破産」と謎の女写真師
第7章 失意と名声のなかで
終章 時代に先駆けすぎた独歩
著者等紹介
黒岩比佐子[クロイワヒサコ]
1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。ノンフィクションライター。『「食道楽」の人 村井弦斎』(岩波書店)にて第26回サントリー学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じゅんいち
2
グラフ誌の編集者としての国木田独歩に光をあてたノンフィクション。なかなかイメージが結びつかないが「婦人画報」はこの人が創刊したらしい。へえ。2010/05/23
Junya Akiba
1
「武蔵野」を筆頭に小説家で名高い国木田独歩。しかし、それは彼のほんの一部分でしかない。現在も続く「婦人画報」の創刊者が国木田独歩というだけではなく、「アサヒグラフ」に先立つこと20年前に「東洋画報」を創刊し、小説家というよりはむしろ編集者として様々な斬新なアイディアを新たなメディアに取り込むべく活動していたというのは新たな発見であった。また、田山花袋をはじめとする当時の文筆家たちとの交流も理解できたが、有名な佐々木信子との熱愛がほんの一瞬なのに比べ、その後、妻となり苦労を共にした治子の物語が断然興味深い。2021/07/23
rbyawa
1
i038、日清日露の時代に『戦時画報』という雑誌が非常に好評であって、あとの評価はなんとなく全て薄ぼけているような人で、逆に極端な賛美に晒されてることもあるのかなぁ? 本の端々からそれが伝わってくるような(著者さんは賛同してたり反論してたり)、まあ、晩年に売れたことと社会的地位にある人らに好意を寄せられていたことなどは本当かな…。ただ戦時中とはいえ月3回でトータル20万部売ってたらある程度の評価はあるよね、多分時代そのものの評価が曖昧なんだろうな、小説は日本一と言われるもののほとんど出てきません。あははw2018/07/23
風斗碧
1
これは力作。非常に多面的にものを見て情報を集め、客観的に評価しようと尽力しているところに愛がみえる。没した歴史を掘り起こして記録するのは至難の業で、それをこうした形に昇華したのは素晴らしい。 著名な作家の若き日と、時代の激動がひしひし伝わる良書。2017/07/08
勝浩1958
1
国木田独歩が終生の仕事と考えていたのは、出版事業であったのだ。しかしながら、彼の編集者としての仕事は世の人々からは評価されずに忘れられてしまい、生活費を稼ぐために編集者として多忙のなか創作した小説はなかなか売れずに貧乏生活が続き、死の少し前に人気作家に押し上げられるとは皮肉なことであった。2011/10/08