出版社内容情報
王朝文化華やかな平安中期、天皇は幸福な日々を送っていた。と思われていたが、実は、権力者への追従に大騒ぎをする貴族たちに退け者にされた寂しい存在であった。意外な王朝の世界を当時の日記で浮き彫りにする。
内容説明
『枕草子』に描き出された華麗な王朝世界。その中心にあるべき天皇が、実際にはないがしろにされていた。摂政・関白の専横、それに追従する廷臣たち。孤立する天皇たちの深い嘆きを聞く者はいたのか。当時の廷臣たちの日記によって、華麗なイメージとは裏腹な王朝時代の真実を明らかにする。
目次
序章 ひとりぼっちの天皇たち
第1章 一条天皇の憂鬱
第2章 円融法皇の嫌悪
第3章 東三条院藤原詮子の偏愛
第4章 花山法皇の不満
第5章 上東門院藤原彰子の困惑
第6章 三条天皇の警戒
終章 裏切られる天皇たち
著者等紹介
繁田信一[シゲタシンイチ]
1968年東京都生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了。現在、神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員、同大学外国語学部非常勤講師。博士(歴史民俗資料学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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お昼寝猫
57
繁田先生も平安朝をわかりやすく解説してくれる方の一人だ 本書では円融、花山、一条、三条の四人の天皇と藤原詮子、彰子の二人の妃にスポットを当てる 平安朝の天皇が決して独裁者ではなく権力者に翻弄される孤独な存在であったことがよくわかる 小右記と権記を主体にしているせいか実資と行成が活躍する場面が多く、道長が悪玉として扱われるが、歴史を踏まえた上で読み物として面白い仕上がりになっている 華麗な王朝時代の闇が垣間見えて興味深い2023/11/28
遊未
8
いじめ、忖度、寄らば大樹の陰…と今も偉い人の世界は同じでしょうね。食事にお当番が誰も来てくれなくても天皇は同じように食事しなければならない。幼児から自由が無いし、死にゆくときが最も悲惨というかお気の毒も極まりない。長生きの「賢人右府」藤原実資さまはお見事です。「小右記」「権記」が頼りの時代です。2020/09/22
ず〜みん
4
図書館の本で読破。妃を愛するとか、親孝行するとか、全て特殊な、『天皇』という人生を歩んだのが天皇たち、特に王朝時代の天皇なのかもしれません。2012/03/31
たらら
3
『殴り合う貴族たち』が権力者とその威を借る者たちの狼藉を総花的に並べたものだったのに比べると、各天皇の置かれた立場を跡づけていく本書のほうがぐっと読みやすい。一条天皇に始まり一条天皇に終わる構成も悪くない。奸臣に翻弄される天皇の悲哀というところに焦点を当てている以上、下世話すれすれになることもいたしかたない。むしろ、この下世話を買う。ある意味では、この天皇に対する見方・語り方こそが今に至っても続いているとみたほうがよいのかもしれない。2010/03/20
杞人
3
読み始めてから気づいたが、『殴りあう貴族たち』と同じ著者だ。わざとタブロイド誌的に興味本位で下世話な書き方をしてあるので、真面目な内容を期待していると肩透かしを食う。それにしても時代劇じゃないんだから、今時摂関=悪玉、天皇=善玉史観もないよなあ…。2009/07/13