内容説明
古来、日本人は未知のものに対する恐れを、異界の物語に託してきた。日常の向こう側に広がる異界では、陰陽師が悪霊と戦い、狐が美女に姿を変え、時間の流れが歪む。酒呑童子伝説、浦嶋伝説、七夕伝説、義経の「虎の巻」など、あまたある異界の物語を絵巻から読み解き、日本人の隠された精神生活にせまる。妖怪研究の第一人者が贈る画期的異界論。
目次
異界をめぐる想像力
反魂の秘術―『長谷雄草紙絵巻』
源頼光と酒呑童子―『大江山絵詞』
妖狐の陰謀―『玉藻前草紙絵巻』
龍宮からの贈り物―『俵藤太絵巻』
龍宮の逆説―『浦嶋明神縁起絵巻』
天界への通路―『天稚彦草子絵巻』
義経の「虎の巻」―『御曹子島渡』
天狗と護法童子―『是害房絵詞』
狐の「浄土」と異類婚姻―『狐草紙絵巻』
百鬼夜行のパレード―『付喪神絵巻』
幽霊の近世―『死霊解脱物語聞書』
異世界観の変容と妖怪文化の娯楽化
著者等紹介
小松和彦[コマツカズヒコ]
1947年、東京都生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科(社会人類学)博士課程修了。信州大学助教授、大阪大学教授を経て、現在、国際日本文化研究センター教授
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感想・レビュー
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misui
2
異界、そして妖怪に関する諸々。物見遊山的な興味で読んでいたら最後に来てうるっときた。副読本として『日本異界絵巻』(ちくま文庫)もおすすめ。2009/08/22
はみ餅
1
泣不動縁起絵巻の祭壇の向こうの病魔が、現代の擬人化された虫歯菌にそっくりで驚いた。日本人のバイキンに対するイメージって千年くらい変わらないんだなあ。2022/03/28
しろきいろ
1
図書館。斜め読み。異類婚姻好きなら楽しいかも。2016/05/21
ロッシ
1
妖怪は、人間の欲望を抑える道徳としての存在だったのですか。とぐろ兄弟、ありがとう2012/06/17
kunugi
1
中世から近代にかけての絵物語を概観し、日本人にとって「異界」がどんな役割を果たしていたか探る本。あまり深くまで突っ込まない代わりに、ユーモア混じりの見解が好奇心を刺激してくれて楽しい。説話、絵巻、そして妖怪たちなど「異界」を構成する諸要素は、伊達や酔狂で生まれてきたわけではない。年月を経て様々な影響を受けたために見えにくくなっているだけで、背景には必ず生成の理由ないし目的がある。そこに目が向くか否かで、「異界」を胡散臭いものと見なすか、価値あるものと認めるかが分かれてくるんだろう。2010/10/02