出版社内容情報
平家物語は立派な史書であり、決して小説ではない──これまで数々の定説を覆してきた著者が、多角的アプローチで平安末期の人間像を描く。新たなる平家物語の読み方を提示し、その背後に隠された真実を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
2
軍記物=小説として、史料価値が低いと言われている「平家物語」を再検証して源平合戦を考察しようという主旨の本。まえがきにあるように、著者があちこちに書いたエッセィをまとめたものなので、同じ話の重複が多くて、あんまり突っ込んだ考察にならないのが、ちょっと物足らない。只、「平家物語」には文学的脚色があるが、「吾妻鏡」には政治的脚色がある、という指摘には納得。吾妻鏡の疑問点を平家物語と突き合わせることで解消するというエピソード(頼朝がすぐに挙兵しない理由)は説得力がある。清盛の安徳天皇への爺バカぶりも微笑ましい。2011/07/13
なかがわみやこ
2
「早すぎた人」はいつでもどこでも悪役。早世すると「いい人」で、生き残れば「有能」。のらくらかわすのも能力のうちかあ。2010/04/23
餅屋
1
『平家物語』には文学的虚構『吾妻鏡』には政治的作為と編纂され著述された書物には著作者の立場があることを踏まえて〈軍記物〉を必要以上に排除せず検証しながら使いましょうというバランス感。重複が多く閉口したが、第4章「源平争乱と地域史」が白眉。山本義経ら近江源氏の蠢動、北陸騒動の主体は義仲では無く国人領主、行家が案外活躍していること。平家は九州・四国の掌握と瀬戸内海支配の様子、反体制としての維盛・資盛らの動き。他でも紀州や熊野の中央政治の影響下での横領の実態といった、周辺の状況を知ることができ新鮮(2001年)2022/02/10