内容説明
表現するすべての人のためのひらかれた電子図書館へ。デジタルアーカイブから描きだす“知の遺産”の未来。新たな「知」を生み出す、図書館、出版、著作権の新時代とは―?
目次
第1部 知の共有と著作権の権利(知識・情報の活用と著作権;インターネット時代の著作権制度;万人が著作者の時代―米国の議論から;デジタルアーカイブのオープン化と著作権の新時代)
第2部 出版と知識創造の未来(電子書籍とは何か?;情報共有時代の社会制度―グーグルとフェイスブックが投げかける問い;ウェブと電子書籍は、作品と作者をどう変えたか;デジタルアーカイブとは何か;メタ複製技術時代の“世界脳”―書物へのオマージュと電子化された“知”;デジタルの衝撃と文化のサスティナビリティ)
著者等紹介
長尾真[ナガオマコト]
1936年生まれ。京都大学名誉教授。京都大学工学部電子工学科卒業。京都大学助手、助教授を経て、1973年より同大学教授。1997年から2003年まで京都大学総長を務めたのち、情報通信研究機構初代理事長、国立国会図書館館長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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vinlandmbit
29
図書館本。インターネット時代の著作権や電子書籍について丁寧に記してある一冊。「万人が著作者の時代」というのはこの2020年代に入った今、当たり前ですが刊行の2015年当時はまだ実感が無かった気がしますので、時代を先読みされていたのだろうと思います。2022/04/14
イノ
13
ネットとパソコン・携帯が当たり前になって完全にコピーされた情報が誰でも安易に広がるようになった時代に本来保護されるために生まれた著作権の有り様が書かれている。 デジタルの商品にどこまで線引きが必要なのか。 そもそも必要なのかとあれこれ考えさせられています。 グーグルが電子書籍の取り組みで、片っ端から電子化するから嫌なら言ってねって普通と逆の発想で何千万冊もの書籍化素晴らしいと思う。 10年くらい裁判で揉めてるけど・・・。 2016/05/05
やまやま
6
著作権とデジタルという取り合わせについては話題が尽きないところであるが、日ごろの生活の中では人それぞれの活用法が定着してきたかな、という思いもある。吉見先生が最後に書いているが、未来を「切り開いて」経済社会に定着させたのはGAFAを代表とするグローバル企業であるが、後手に回ったパブリックな文化機関はどんな役割を果たしていくか。著作権法制も、必死に現代に適合すべく制度の改訂を繰り返しているが、根本解決がすすむ方向感はない。フェアユースをベースに議論が進むことは意義を感じるが、訴訟社会はそれほど歓迎できない。2019/09/11
konomichi
3
太っ腹合本版その3。長尾先生を筆頭とした、デジタルと著作権の狭間の話題。電子書籍、電子図書館、著作権、孤児作品、アクセシビリティの話題が続く。スイカが普及して、1円単位で課金できたり、首都高で課金の粒度を細かくできるようになったのと同様に、著作物についても粒度細かく課金する仕組みができればと思う。コンテンツを産み出す側より流通させる側の方が実入りがいい、ってなんか変だと思うので、なんとかしたいんだよね。2017/04/23
HALI_HALI
2
良書。デジタル化された知識の活用に関しての現状と展望への考察。著作権とは著者の知的創造が歪曲される事を防ぐのが第一の目的。インターネットは人類共通のプラットホームのため、インターネット上に書籍などの情報を公開する際にはこの著作権がネックになる。しかし著作権は1次創作物に基づいて新たな付加価値を伴った2次創作物を作りだすことは認めている。よって、デジタル時代でのネット上の情報公開は新たな付加価値を生むという前提で今後更にオープン化が進むだろう。そしてそれが情報を有機的に繋ぎ新たな知的創造を生み出す。面白い!2017/03/14