出版社内容情報
アララギ写生主義が歌壇の主流と見なされていた時期に、これと対立して現代短歌の向かうところを真剣に模索し挑戦した太田水穂。資料が少なく評価が遅れていたが、ハンディな秀歌集となって再登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
田中 綾
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札幌の大路のすゑの夏がすみ広野とおもふ野の見ゆるなり / 太田水穂 /作者は、歌誌「潮音」の創刊者。1921年(大正10年)8月に来道し、連作「北海遊草」を残した。函館から札幌に入り、白老、登別、室蘭を経て再び函館へ。札幌には4日間滞在し、広々とした道路や風景に感嘆したようだ。遠景がかすんで見えるほど、どこまでも広がる野の風景。「広野」が、特別な歌語として立ち上がってくる。(2021年8月17日掲載) 2021/08/17
ささき
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同郷の大先輩歌人なので、いつかはしっかりと勉強したいと思っていたところ、角川書店で文庫版、しかも1000首近く入って1000円というお手頃価格で購入できて大満足。旧仮名遣い、文語体だけれど分かりやすい。端正な言葉遣いと弾むような韻律が、清々しさを与えてくれる。日本に生まれ、日本の四季と風景を楽しみ、日本の文化を大切にする心を教えられた。短歌とは何か、なぜ自分は歌いたいのかと思ったときに、立ち返る原点となる一冊。2016/03/08