内容説明
世界中で最も知られている短編小説「最後の一葉」は、どんな文学背景をもつ作品なのか?それを生み出したO.ヘンリーとはいったいどんな作家だったのか?100年を経たいまもなお、誰からも愛され続ける珠玉の短編群を生んだ作家O・ヘンリーの創作の謎と、獄中から作家へと転進したその波瀾万丈の生涯を描く、日本で初めての本格的評伝。
目次
第1章 波瀾万丈の果て(南部ノース・カロライナ時代(一八六二‐一八八二)
西部テキサス時代(一八八二‐一八九五)
逃亡と服役の時代(一八九六‐一九〇一)
ニューヨーク時代(一九〇二‐一九一〇))
第2章 珠玉の短編小説を読み解く(四つの地域的背景―南部・西部・中米・ニューヨーク;O.ヘンリー作品の特質―「最後の一葉」はこうして生まれた)
第3章 揺れる文学的評価を探る(高められた評価;一転して行われた酷評;再評価の動き)
第4章 音楽家フォスターと作家O.ヘンリーが共有する郷愁の世界(スティーヴン・C.フォスターの軌跡;「アメリカ的なもの」を求めて)
著者等紹介
斉藤昇[サイトウノボル]
1955年、山梨県生まれ。立正大学文学部教授。立正大学大学院文学研究科博士後期課程満期修了。アメリカ文学専攻
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
36
先月開催された【O・ヘンリー誕生日読書会】にて再読の機会を得た際、プロフィールにある“服役”の文字に長年戸惑いつつも、この人の人生について何も知らなかったことに改めて気付き手に取ってみました。なるほどと膝を打つこと多し。特に『賢者の贈り物』の、らしくないエモーショナルなエピローグについての考察にはしんみり。2014/10/13
Roko
26
O・ヘンリーはとても真面目な人だったのでしょう。自分が刑務所に入っていたことを娘には絶対に話さなかったし、その経歴を恥じています。でも、刑務所で出会った人たちには、共感を感じているようなのです。「なぜ刑務所に入るようなことをしたのか、分からないような人がいる」と言っています。と思えば、逃亡した時に仲良くなった犯罪者アル・ジェニングズとの共同作品「列車強盗」を執筆したりもしています。波乱万丈な彼の人生が、名作を生みだしたのだとしたら、彼の人生も書き残して欲しかったと思うのです。2025/02/10
YOMIPITO
3
O・ヘンリーが急に気になってきて見つけた評伝は200ページ弱でO・ヘンリーの諸作並に読みやすい。 服役、2度の結婚、短い活躍期間、48歳没という生涯はドラマ化に相応しいぞ。映像化されないのか?他に評伝など見当たらないので一読の価値あり。 最後の方にさらりと同時期の作曲家フォスターとの対比が書かれていたので調べたら、フォスター(37歳没)はその生涯が数回映画化されてるのね。おまけにインスパイアされて周五郎の「虚空遍歴」ができたとか! 思わぬ連鎖反応は拾い物。 2023/05/29
たくのみ
3
相棒の再放送で見た「右京のスーツ」。賢者の贈り物みたいなラストだったど小松政夫のスーツ職人はO.ヘンリーのオマージュになっていたのか、とこの本で理解した。大衆的であるがゆえの低い評価とその後の再評価。浮沈の激しい人生だから生まれたペイソスとユーモアなのですね。2013/02/02