出版社内容情報
晩春の自主避難、疎開、移動、移住、言ひ換へながら真旅になりぬ
幼子との何気ないささやかな暮らしが東日本大震災によって一変する。仙台で被災、原発の事故、九州への避難。日常が非日常となり、めまぐるしく変わる生活のなかで生きる意味を問う。待望の第4歌集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
7
読友さんの感想に導かれて手にした歌集。短歌集一冊を丸々読んだのはたぶん初めての経験かもしれません。初心者だからか、こんなにも日常を詠むものだったんだと素朴な驚きも。一転、「むいか、ここのか」は広島・長崎の八月が、震災での状況・安否がそれぞれに添えられた「消息」では震災・原発事故という非日常がその根底にありました。それぞれに添えられた実子殺害の事件報の日付の間隔のなさにあ然とする「吾亦紅(われもこう)」は、我もこう(あったかもしれず)と読めてヒヤ汗!さすがに短歌、文字量以上のさまざまな思いに圧倒されました。2014/09/19
てくてく
5
ストイックな人なのだろうな、という印象を受ける歌集。仙台で暮らし、受洗し、子を持ち、その子のために仙台を出て宮崎で暮らし始めた頃(2005年から2012年)の歌が収録されている。子殺しや震災に関する詞書のある歌は、歌よりもその詞書にどうしても目が行ってしまった。「晩春の自主避難、疎開、移動、移住、言い換へながら真旅になりぬ」「見えぬものは見ない人見たくない人を濡らして降れり春の時雨は」「産まざればできぬ虐待、遺棄、心中きらきらとわが手中にをさめ」「子を産みて行方不明になりしわれを探しにゆけり桜の森へ」2016/06/01
仁藤
1
「われに芯なくてトイレットペーパーに芯あることの悲しき朝」81点2024/08/16
yumicomachi
1
〈ただわれをまねて両手を合はする子その祈り深からむわれよりも〉受洗、出産、被災、仙台から宮崎への移住…といった大きな変化があった2005年から2012年1月までに発表した作品を選びまとめた著者第四歌集。内省的で、静謐であるが不思議な迫力を持って迫ってくる。2013年芸術選奨新人賞受賞作。2017/07/11