内容説明
家族への愛を死の直前まで歌い続けた歌人・河野裕子が、生前主要舞台の一つとした総合誌『短歌』に残した歌と文章、特集企画、撮り下ろし写真を厳選採録。夫・永田和宏、子・淳、紅の3人による「家族団らん―河野裕子の思い出」を特別新収録。
目次
第1章 作品(「桜花の記憶」50首 第15回角川短歌賞受賞作(昭和44年6月号)
「駅間の時間」30首(平成21年2月号) ほか)
第2章 特集(一)河野裕子の世界(平成15年2月号)(河野裕子とその時代1「おまへがおれを眺めてた」(坪内稔典)
河野裕子とその時代1「光れる闇」(川本千栄) ほか)
第3章 特集(二)河野裕子のすべて(平成21年9月号)(河野裕子論 初期「エポックメーキングということ」(三枝昂之)
歌集解説 初期「一気呵成の四歌集、その大輪」(川野里子) ほか)
第4章 文章(無瑕の相聞歌―『寺山修司青春歌集』書評(昭和47年4月号)
わが歌の秘密(昭和49年3月号) ほか)
第5章 「家族団らん―妻・母、河野裕子の思い出」(永田和宏・淳・紅)(特別収載)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
42
【たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行ってはくれぬか(『森のやうに獣のやうに』)】家族への愛を死の直前まで歌い続けた歌人・河野裕子が、角川『短歌』に残した歌と文章、撮り下ろし写真を採録。夫と子どもによる鼎談、略年譜も収録。「病気して何かが狂ひ始めたり狂はぬやうに体調整ふ」「人間は自分に退屈するものだ私は面くらふあなたの言葉に」(『春へ』)「とかげのやうに灼けつく壁に貼りつき手てふるへてをりぬひとを憎みて」(『桜森』)「書くことは消すことなれば体力のありさうな大きな消しゴム選ぶ」(『体力』)⇒2023/02/07
太田青磁
19
事実だけで面白い。作者の感想はいりません・一首必要なときは十首つくる・歌は20点か120点を心がけること・事実につきすぎると事実からずれてしまう・歌は意味から作るのではなくて言葉から作るのです・言葉の引き出しをたくさん持つ・最初に感じたものを思いきって自分の感覚で・歌集は買って読む・分からん歌は分からんと言えばよろし・残りの四分くらいを詩型が代弁してくれる・歌を作っている自分に自信を持ってくださいね・感動と表現の出来はたいてい反比例します・模倣されることを、誇りと思えるかどうか・欠詠してはいけません2015/05/13
棕櫚木庵
18
読書メーターで「しんしんとひとすぢ続く蝉のこゑ産みたる後の薄明に聴こゆ」が紹介されているのを見て,図書館で借りた.写真,河野の短歌・エッセイ・評論・語録に加え,河野裕子論,家族による座談会,年譜からなる.特集雑誌のような作りの本.河野以外の手によるものは,引用されている歌以外は流し読み.短歌以外では,「エッセイ」2篇が良かった.母親のために特別に作った歌集の話と飼い猫の話と.巻末座談会の「飼い猫誘拐事件」の顛末も愉快.本当に猫好きだったんですね.→2021/07/16
私的読書メモ3328
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河野裕子さんについての評論、思い出話、対談などを集めたもの。とても興味深く読めました。こういう形で読んでみて、改めて河野さんの文体の独特さ、特別さを感じました。相当な破調であっても、定型の韻律に乗っているように感じてしまうのは、一体なぜなのか。2015/08/27