感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
oz
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初読。白眉はイェリネクの戯曲『雲。家。』の邦訳だろう。この為だけに本誌の購入しても良い。後のノーベル賞に繋がる本作の開演は悪評に彩られた。それはこの戯曲が演劇という装置への馴致に徹頭徹尾抗うものであり、「演劇」という制度/領域が解消されうる地帯に我々を誘う、文化にとって危険な装置であった為だ。膨大な引用で成立する本作は固有名詞がテクストを代表象する、という唯名論的な文化基盤を消失させた。むろんこれ自体は概出の手法だ。しかしイェリネクの驚異はその固有名詞の解除を「自らの」作品にまで及ぼしてしまった所にある。2011/07/30