内容説明
世界的数学者として生涯研究にいそしみながら、哲学、宗教、教育にも造詣を深めた岡潔。彼が残した名随筆から科学と宗教、日本文化への示唆に富んだ文章を厳選。小林秀雄との対談「破壊だけの自然科学」や自由な心の働きについて論じた「独創とは何か」、未完の遺作の草稿「夜雨の声」等を収録する。ひらめきと情緒を重んじ、柔軟な思考で真理をみつめた眼差しから、現代社会の問題を解く糸口が垣間見えてくる。「先人に学ぶ」シリーズ。
目次
情緒
独創とは何か
こころ
ロケットと女性美と古都
春の日、冬の日
無明ということ
数学も個性を失う
科学的知性の限界
破壊だけの自然科学
ふるさとを行く〔ほか〕
著者等紹介
岡潔[オカキヨシ]
1901年大阪生まれ。京都帝国大学卒業。フランス留学を経て、帰国後、広島文理科大学、北海道帝国大学、奈良女子大学で教鞭をとる。後年、多変数解析函数論の分野における超難題「三大問題」を解決し、数学者としてその名を世界に轟かせた。1960年に文化勲章を、1963年に『春宵十話』で毎日出版文化賞を受賞するなど多くの名随筆を残した。1978年没
山折哲雄[ヤマオリテツオ]
1931年生まれ。宗教学者。東北大学文学部印度哲学科卒業。国立歴史民俗博物館教授、国際日本文化研究センター所長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
弥勒
10
道義の根本は「人を先にして、自分をあとにする」ことで、それを体取し(自分がそのものとなることによって、そのものがわかること)、その上で、「人の悲しみがわかるようにならなければ不十分」だと説く。この、人の悲しみがわかるというのは、「人が悲しんでいるから自分も悲しくなる、悲しくなることがわかると自分も悲しくなる」ということらしい。非常に識見の深いお言葉だと思う。そして、これからの自分の言動にはよくよく注意を払って、自分本位という無明を入れないように努力していこうと思った。2015/05/19
Tadashi Tanohata
6
人類を自滅から救うのは日本人の情緒だと。ただその日本人も明治以後、情緒力が低下していると。例えば四季の愛で方が大きく変わってきたと...。すみません、ちょっと待ってください。その解釈にも自信が持てません。読書歴上、最難関でした。どなたかの感想を拝読したくアップした次第です。岡潔とは何者ですか。 2014/12/28
ハチ
4
凄まじい本! 鬼才岡潔の日本人観、仏教観、科学観などが粛然と語られていき、読者の頭には豪雨が降り注ぎ、その雨上がりまでの30分間のような静けさを持って読まないと、完全にもっていかれる!覚悟の読書。 道元禅師の歌はどれも美しく、岡潔さんもかなり引用されていた。2017/10/31
Kyohei Matsumoto
3
岡潔の随筆集。教育論は毎回でてくるが、今回のは情緒について真正面から語ってみようという試みがなされていたり、小林秀雄との対談が入っていたりした。西洋思想の無批判な取り入れ、アタマだけの教育、自我を肥大させるような教育、科学や物質主義の間違いを鋭く指摘、日本人の本来の情緒へ還ること、現代にも通ずる批判がたくさん書いてある。日本人ならとくに読むべき必読書と言えるのではないか。晩年は宗教的体験もあったようである。そこまでいくには、今の世の中に蔓延る考え方では、到底かなわない。早急に教育を立て直さねばと思う。2019/04/06
a
2
岡潔は綺麗な文章を書くなあと思った。2020/05/06