内容説明
アメリカインディアンの精神的伝統を今なお暮らしの中に残す共同体がある。スー族の保留地、ローズバッドとパインリッジである。胸に刺した木串で身を裂くサンダンス、大いなる霊・ワカンタンカへの信仰、聖なる輪の教え―。比較文明学者である著者が彼らと生活を共にしながら自らの目で見た事実から、その精神世界を探り、明らかにしていく。物質文明の発展だけでは得ることのできない「人間の本当の豊かさ」を問い直す。
目次
プロローグ
第1章 メディスンマンを訪ねる
第2章 ラコタの人間社会
第3章 男と女
第4章 ミタクエオヤシン―私に繋がる全てのもの
第5章 ラコタの神話世界
第6章 精霊の住む国
第7章 サンダンスへの道
著者等紹介
阿部珠理[アベジュリ]
福岡市生まれ。カリフォルニア大学ロスアンジェルス校大学院修了。博士(比較文明学)。専門はアメリカ先住民研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
トンボ玉
18
1994「アメリカ先住民の精神世界」の改題作。ネイティブ・ラコタ族の研究レポートです。保留地の中に幾つものコミューンがありそこには民族大学まであるということで、今ひとつ保留地のイメージできません。 それでもかなり丁寧な調査・交流をしていて新たな発見も沢山あります。 文庫版の後書きでは(2014年)保留地での貧困、犯罪の増加などでコミューンの内部崩壊の進行も書かれています。「彼らの信仰に対する不敬の行為に研究者は手を貸してる」という強い声もあり難しさがありますが阿部さんは基本的に謙虚にやっているようです。2014/07/14
吟遊
15
良書。ネイティヴ・アメリカンについての本は多々あるが、きちんと学術的な確かめがあって出されている本は少ないと思う。そのなかで、この本は、エッセンスを一冊にコンパクトに、学者がまとめたという、これ一冊読めば、周りの何冊をもカバーできるような知識の本。2017/03/20
sasha
6
アメリカ先住民ラコタ族の保留地でのフィールドワークをまとめた作品。文字を持たないラコタ族が白人の侵攻まえから受け継いだ伝統の儀式にも参加し、彼らの思想に触れた貴重な作品だと思う。「文庫版あとがき」で記されている保留理の崩壊が進んでいるとの一文が気にかかる。アメリカ先住民の文化も、いつかは消滅してしまうのかなぁ。2018/01/14
とわも
0
インディアンのラコタ族の精神性に寄り添った本。20年ほど前なので今は違うのかもしれないが、伝統文化を中心にラコタ族がラコタ族であろうとしているありさまが生き生きと伝わってきた。メディスンマンのあり方やギブアウェイの決まりとその本音などにも興味を惹かれたが、ヘヨカというトリックスターの役割を果たす存在が「物事の両義性を絶えず人に投影してくれる教師である」ことに感銘を受けた。 伝統を本の形にするのは賛否あるだろうが、そのような議論を続けていくためにもこのような本が読めて良かった。2018/12/03