内容説明
科学は世界を正確に映し出しているか。言葉と実在の繋がりに疑問を抱く物理専攻の咲村紫苑が、科学哲学者・柏木達彦を再び訪ねる。古都の大学、晩秋の課外授業が始まった。プラトンの描く理想国家・アトランティスが星空にあったとする驚くべき学説を紹介する柏木。かつて存在するとされたものが後の研究で存在しないと修正されることがある科学の歴史。そこにひそむ根源的観念論とは。「知る」と「信じる」の関係を解き明かす柏木シリーズ第2弾。
目次
第1話 紫苑の疑問(前期試験;フロギストン ほか)
第2話 送別会(後期授業の準備中に;知識と事実の親密な関係 ほか)
第3話 星空のアトランティス(アメリカ先住民の遺跡;なんのための「まじないの輪」か? ほか)
第4話 秋深き(両手に花?;観念論 ほか)
著者等紹介
冨田恭彦[トミダヤスヒコ]
1952年、香川県生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。同大学大学院文学研究科博士課程修了。京都大学博士(文学)。専攻は哲学。ハーバード大学客員研究員などを経て、京都大学大学院人間・環境学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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北条ひかり
3
9時間19分。著者によるこのシリーズは、第1作も面白かったので、第2作も読んでみた。指示理論、理論負荷性、価値相対主義、観念論について、楽しく学ぶことができる上に、あのアトランティス物語(プラトンの「ティマイオス」「クリティアス」)までわかっちゃうなんで、なんてお得な本!ではありませんか。科学・哲学に興味がある高校生から、私のようにプログラミング言語と日々格闘している社会人にも役立つ(ただし、学問をちゃんとやっている大学生・院生には不要。笑。)かも?2016/10/13
いかすみ
2
「伝統的指示理論」やアトランティスの物語の解釈を通して、言葉と実在の結びつきが確固としたものではなく、それらが自分の信念に基づくということが示される。これは人それぞれだから、真理などないとするチープな相対主義ではない。この「観察の理論負荷性」とは、理論と無関係で客観的な実在を否定するが、整合性や根拠までも否定しない。この本の主人公の柏木達彦はこのような他でもありうる可能性を「希望」と見なしているようだ。なぜなら、未来永劫不変の真理よりも、可変的真理の方が変わりうる可能性があるぶん、希望があるからだ。2025/09/04
於千代
2
タイトルはプラトン講義であるが、印象としては言語哲学の話だったように感じた。アトランティスの章は話としては面白かったが、途中から何の例として取り上げられているのかわからなくなってしまった。2024/10/07
ひよこ皇太子
1
全体のテーマは観測の理論負荷性。前半は指示理論だが興味は沸かなかった。登場人物の紫苑が発する固有名への疑念に同意出来ないし、適当と言えば適当に使用されている固有名に不満も疑問も不都合も感じない。色々な解釈と問題点を指摘していたが、わざと変な解釈をしているようにすら思えた。後半は何のためにその話をしているのか忘れるほど延々とアトランティスのことについて説明されてうんざり。前巻は面白かったんだがこの巻は疲れただけ。[Kindle unlimited]2023/09/17
issy
1
言葉と実在の関係から、観察の理論負荷性の話に繋がり、観念論の入り口をちらりと覗く、という流れ。理論負荷性の具体例として出てくる、プラトンのアトランティス物語の二つの解釈論の説明に、かなりページ数が割かれている。この部分自体は面白いのだが、哲学講義としてはやや物足りない気がする。2010/06/09