内容説明
町会館の清掃中に本棚で見つけた『今昔奇怪録』という2冊の本。地域の怪異を集めた本のようだが、暇を持て余した私は何気なくそれを手に取り読んでしまう。その帰り、妙につるんとした、顔の殆どが黒目になっている奇怪な子供に遭遇する。そして気がつくと、記憶の一部が抜け落ちているのだった―。第16回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作を含む5編を収録。新たな怪談の名手が紡ぎだす、珠玉の怪異短編集。
著者等紹介
朱雀門出[スザクモンイズル]
1967年大阪府生まれ。北海道大学大学院博士課程修了。2009年、「今昔奇怪録」で第16回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。現在、大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こら
61
今夏、読友さんに紹介されすっかりハマっちゃった『脳釘怪談』の著者処女短編集。こちらはフィクションだけど、日本ホラー小説大賞を受賞しただけあって、後の実話系の片鱗が見える表題作の雰囲気が抜群。なにしろ何世紀も現在進行形で書かれている奇譚集って設定がステキ!それと、荒俣先生はじめ、選考委員達の怪談の名手になるだろう、という先見の明にもさすが!2021/09/12
藤月はな(灯れ松明の火)
59
表題作は妻が怪異があったと思われる場所へ行くことを固執する様が薄気味悪かったのですが結末に納得。でもあれは本当に名誉なことなの・・・?『疱瘡婆』のオチは予想通り。でも『狂覚』は訳が分からないかったです。ゾンビ嫌いとしては終わりのないゾンビ・ゲームに入ったとしか思えない『釋迦狂い』も怖いが一番、怖いのは『きも』。途中で入る「ヤマキは狂ったんだ」という言葉から不穏な事実が告げられていき、結局、「ヤマキは狂ったんだ」と発言したモノは分からないって・・・・ああ、厭だ(泣)2014/07/16
はらぺこ
54
短編集。 表題作の『今昔奇怪録』は番号が抜けてたり記述が無かったりしてたけど自分には意味が分からんかった。なので、もう少し長い話にしてくれた方が自分には良かった気がする。 短編やからか全体的に物足りなかった気がする。それぞれ長編やったら良かったのになぁ。2012/02/13
sin
52
今昔怪奇録:表題作は怪奇の現れ方を不鮮明にすることでフォークロアな風合いと、ぞくっとさせるいい味を出している。疱瘡婆:何故か落語調の語りをイメージした、オチは想像の範囲であるがなかなかに身につまされる。釈迦狂い:狙っての構成だろうが中途半端な感じでいまひとつ。きも:研究生を対象においた理論と恨みの対比がよい。狂覚:被験者・干渉者・観察者・統括者とわけたところの効果が十分に読み取れず文中の鏡というアイテムが生きていない、被験者と観察者の2者対比でまとめたほうがすっくりと怖がることができるのではと感じた。2014/08/26
眠る山猫屋
50
再読。この方の作品では『首ざぶとん』が好きなので、デビュー作であるこちらも再考の為に読み直し。やはり雰囲気が抜群に良い。曖昧だが、ぼやけていない空気感。ひたひたと近寄るような怪異。残酷ではないが、取り込まれてしまうような恐怖感。実はちょっとだけ、今昔奇怪録の継承者に選ばれたかったりする。2018/11/27