出版社内容情報
勝田 政治[カツタ マサハル]
著・文・その他
内容説明
王政復古のクーデター、廃藩置県の断行、西郷隆盛と決別した征韓論政変、内務省の設立―。劇的な明治期の内治外交の困難をすべて引き受けた「明治政府最高の実力者」大久保利通。迫り来る欧米列強の圧力のもと、直面した多くの難題にどう立ち向かい、日本の進むべき針路をどこに定めたのか。明治維新の各局面における彼の国家構想と政治行動に焦点を据え、「意志の政治家」と呼ばれた生涯と大久保が描いた近代日本像に迫る。
目次
プロローグ 大久保利通のイメージ
第1章 国政参加をめざして(島津久光のもとで;薩摩藩を代表する ほか)
第2章 王政復古クーデター(幕府・朝廷への失望;西郷隆盛とともに ほか)
第3章 廃藩置県の断行(戊辰戦争の波紋;中央集権化への模索 ほか)
第4章 欧米視察の衝撃(明治集権国家の誕生;岩倉使節団が横浜を出発したとき ほか)
第5章 征韓論政変(留守政府の混乱;西郷隆盛との決別 ほか)
第6章 大久保政権の始動(内務省の設立;強まる反大久保運動 ほか)
第7章 志半ばの死(農民と士族の反乱;内務行政の推進 ほか)
エピローグ めざされた近代日本とその後
著者等紹介
勝田政治[カツタマサハル]
1952年新潟県生まれ。早稲田大学卒業後、同大学大学院博士課程修了。現在、国士舘大学文学部教授。専攻は日本近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こういち
13
大久保が描いた国家観の成り立ちを時系列に従って追う。本書は、明治創成期を政治主導権の抗争に視点を当てて整理した名著。特に、大久保と木戸との微妙に異なる施策の根幹に至る結末は、滑舌良く分かりやすい。思うに「大日本帝国」の基軸は、国の権威となる皇室を形式的に奉った、いわゆる現行制度内における下克上に成功した〝under-boys〟に因る政治システムにあり、その後に整う軍制において、下からの要求を受けやすい、ひいては下の行動を追認しやすい組織を産み出したのではないか。2015/05/08
大先生
12
従来、非情・冷酷・専制政治家とされて人気のない大久保利通。しかし、実は熟考と果断の政治家であり、意思の人であって豪傑・大政事家であったと。主君久光と決別し、畏友西郷とも決別。日本の近代化のために冷酷ともとれる決断を積み重ねたわけです。当時は集権化が必要だったため、専制もやむを得ない状況だったと理解できます。大久保さんは確かに凄い人だとは思いますが、やっぱり西郷さんの方が好きですね。人としての温かさって大切だと思います。2025/04/14
筑紫の國造
6
西郷隆盛に比べ、人気で格段に劣る大久保利通。しかし近代国家建設の功績で、大久保以上の人はいないだろう。本書は大久保の評伝ではなく、その国家観を辿り、彼がどんな国家を目指したのかを探る。あくまで近代国家建設の信念に忠実で、主君の島津久光と決別し、最後は親友の西郷隆盛とも戦わねばならなかった大久保は、まさしく信念の人だ。史料の原文引用が少ないのは物足りないが、その分読みやすい。様々な誤解を受けている大久保の思想を知る、よい手引きになる。西郷が「情の人」なら、大久保はまさしく「信念と理の人」と言える。2016/10/11
コッシー
1
内治外交の課題に一人で立ち向かったリーダー。暗殺されなくて後10年活躍していたら、明治は違ったのでは?2015/05/28
ひよこ皇太子
0
幕末から維新後まで大久保の目標は一貫して国内一致であり、何度失敗しても別の方法でそれを実現させようとした執念には感心した。無私で明確な目標と実行力を兼ね備えた大久保による専制は、あの時代の日本にとって最良の政治形態だったと思う。暗殺した士族の言い分には一理もない。2019/10/31