内容説明
戦国武将・大名として信長・秀吉・家康の3人の天下人に仕え、「へうげもの」(剽軽な物)をとりこんで乱世を生きた古田織部。その名は「織部焼」として世に知られるが、実際に何をなした人物だったのか謎も多い。千利休の跡を継ぐ茶の湯の天下一宗匠として、慶長年間の茶の湯を変革。斬新・豪放な造形の織部焼をコーディネートし、新奇の流行を巻き起こした茶人・織部に焦点を結び、桃山文化を演出した奇才の実像を活写する。
目次
第1章 古田織部の生き方(エピソードで探る織部の評判;茶の湯宗匠スターダムに昇る ほか)
第2章 古田織部の指導力(古田織部の指導力;織部の創造力の拠り所 ほか)
第3章 織部と創作陶芸(古田織部と新作茶陶;唐津焼をめぐる織部の役割 ほか)
第4章 茶道具に注がれた織部の創意(ケース・バイ・ケースの創意;茶碗に示す織部の個性 ほか)
第5章 織部の茶の湯変革(食器革命と織部;創作食器と酒器 ほか)
著者等紹介
矢部良明[ヤベヨシアキ]
1943年生まれ。東北大学文学部美術史科修了。東京国立博物館陶磁室長・同考古課長・同工芸課長、郡山市立美術館館長を経て、現在、人間国宝美術館館長。専門は茶道史、中国・日本陶磁史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shou
5
武将としてではなく、茶人としての古田織部の美学と感性を史料の中に辿る。利休と比較しての「ポピュラーさ」が興味深い。ここまではっきり自分の美の在処を掴んで迷うことなくコーディネートしていけるというのは何だか羨ましい。2015/01/30
んがんぐ
3
資料が少ないため、推測のところはきちんと推測と書いてあって、とても良い本です。そのせいか冗長になったり、結局なんなんだってところもありますが、やむを得ないのかも知れません。難しいですね。写真がカラーだったら良かったなぁって思いました。2015/01/23
m
2
「へうげもの」の関連本として読んだが、さっぱりわからん(笑)お茶をやっていれば流れや道具の名前もわかって楽しいのだろう。内容は中級向け。2016/12/29
MIYA
2
今年(2015)は古田織部の没後400年記念。1615年に、一言も釈明をせずに黙って腹を切ったといわれる織部。そんな彼の生き様・理念に、恐ろしいほどに惹かれてしまいます。師・千利休は自分の志を貫かんとしてやはり切腹した。しかし織部は利休を反面教師とし、”クラシック”な茶の湯を”ポピュラー”な茶の湯へと変えていく。先人の教えを踏まえつつも、自身の創作の種を決して摘み取らない。臨機応変当意即妙融通無碍。その中には、利休と等しく一本の芯がたしかに通っている。飄々としながら、真面目に”へうげる”織部。魅かれます。2015/01/08
Yoshi
1
古田織部というと漫画のへうげものなどが有名だが、その大本のネタの検証っぽく読め楽しめた。 利休の侘寂重視の茶の湯から遊び心のあるものへの転換は小人→武家茶道への転換の間に含まれたのだが、その間のひょうげた器はその転換の間にどさくさにまぎれてやったみたいな感が自分には読み取れている。 有名な織部焼から織部流の手前や利休の時に下げられた唐物をもう一度賦活させる鎖の間など様々な古田織部の趣向が説明され勉強になった。2023/02/06