出版社内容情報
南北朝合体の後も旧南朝勢力は、室町幕府の抱える諸矛盾と結びつく形で再起を図り続けた。史料実証の立場から可能な限りの関係史料を収集し、その「闇」を明らかにする。後南朝の歴史に光を当てた好著。
内容説明
六十年におよぶ南北朝動乱。両朝合体後、皇位迭立を阻まれ、歴史の表舞台から姿を消した旧南朝の皇胤たちは、いかなる運命をたどったのか。陰謀に巻き込まれる者、再興の志を持つ者、さらに、三種の神器のひとつ、神璽を奪い去る事件をひきおこす者まで現れたのである。室町幕府の抱える矛盾や天皇家の闇を、少ない史料を丹念に集め実証。近・現代史にも影を落とすその歴史に光をあてる。新知見を盛り込んだ後南朝史の決定版。
目次
序章 後南朝とは
第1章 南北合体、一天平安
第2章 後亀山法皇とその周辺
第3章 南朝皇胤と室町幕府
第4章 禁闕の変
第5章 長禄の変
終章 後南朝の終焉
著者等紹介
森茂暁[モリシゲアキ]
1949年、長崎県生まれ。九州大学大学院博士課程中退。現在、福岡大学教授。文学博士(1985年九州大学)。日本中世史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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qwer0987
8
南朝は敗者で主体的に記録した文献はなく、彼らを知るには第三者が記録した内容を寄せ集めるしかない。そんな後南朝の歴史を丁寧に解き明かし組み立てる作者の研究姿勢は素晴らしかった。南朝はジリ貧な状況だったわけだが、高貴な血を引いているだけに利用価値がある。そのため幕府の対抗勢力は後南朝の皇胤を担ぎ出して旗頭とし何度か混乱も起こる。義満と義持は彼らを取り込もうとし、義教は絶やそうとした。それでも何度も再起の動きを見せるのは後南朝の矜持だろうか。弱小勢力ながら中央の政治と無縁ではない後南朝の姿がわかり勉強になった2022/11/12
Kamabonz
6
後醍醐天皇の後胤たちの悲しき末路が紐解かれています。 南北合一後は、室町幕府の「根絶やし」政策により、一人の天皇も出せないばかりか、宮家として存続できた家もなかったのはかわいそうでした。 正式に臣籍降下した人もいなかったようなので、第二次大戦後にでてきた熊澤天皇に皇位継承権などはないというのは、著者の言う通り正しい見方なんだと思うのですが、南朝の血を引く人が自分の血統を知りながらひっそりと暮らしていたことを考えると、なんかやるせないですね。 でも、この時代をもっと知りたいと思う一冊だったのは間違いないです2015/03/28
MUNEKAZ
5
後南朝を追った一冊。室町幕府に不穏が漂うたび、反幕府派の旗印として担ぎ出される南朝の後裔たち。不死鳥のごとく活動してきた彼らが応仁の乱以後ぷっつりと消息を絶つのも、その存在が北朝・幕府あってのアンチテーゼであって、幕府自体がガタガタになり、利用される神輿になってしまうと、もはや存在意義がなくなってしまうからなのかもしれない。また護良親王以来となる南朝と赤松氏の繋がりが、陰に表に見え隠れするのも興味深かった。2018/06/23
蛭子戎
5
南朝が降った後でまた後亀山上皇がキレて逐電して後南朝としてまた室町政権と対立。そして長録の変で滅亡...したかに見えてちゃっかり応仁の乱のころまで残ってたんだよねって話。著者の論文集なのか時系列が行ったり来たりする。主要な登場人物の活躍年代とそれなりのキャラクターの知識がないと読みにくく感じる人もいるかもしれない。2018/01/19
Sanchai
5
南北朝研究の第一人者である森先生の著書。後南朝の歴史といいつつも、これを読むと後南朝とは室町幕府と南北合一後の皇室・皇胤の混乱ぶりを投射する鏡のようなものであったのかなという気がした。京都だけでなく、鎌倉府や播磨で幕府に反旗を翻す動きが描かれたり、南伊勢の北畠氏の動きが描かれたりして、いわば南北合一から応仁の乱あたりまでの室町時代中期の政治史全般が描かれているといってもいい。後南朝の動向を示す史料は少ないと著者は言うが、当時の日記がこれだけ残っているのは驚きだし、著者の読み込み方もすごいと思った。2015/06/17