出版社内容情報
煩悩を滅する道をみずから歩み、人々に教え諭したブッダ。出家、悟り、初の説法など生涯の画期となった出来事をたどり、人はいかに生きるべきかを深い慈悲とともに説いたブッダの心を、忠実、平易に伝える。
内容説明
ブッダは力強く断言する。私が説いたのは人間の苦しみとその原因、そして苦しみを滅する道だと―。真の自己に目覚めよと訴えつづけたブッダの生涯を、出家、降魔成道(悟り)、初転法輪(初の説法)など画期となった出来事とともに紹介。原始仏教の豊かな世界を「スッタニパータ」『ダンマパダ』など聖典の言葉を数多くとりあげながら平易に解説。慈悲と善き友を語り、心の平安を説いた人間ブッダの思想と生涯が分かる、最良の入門書。
目次
われ一切世間に違わず
さとりにいたる道
降魔成道
なにを説法したか
理法は永遠なり
無我と非我
慈悲の心とは
善き友、ブッダ
「空」と「中道」
仏弟子たち
生死を超える涅槃
入滅の時
著者等紹介
中村元[ナカムラハジメ]
1912年、島根県生まれ。東京帝国大学文学部印度哲学梵文学科卒業。東京大学名誉教授、東方学院学院長、比較思想学会名誉会長、学士院会員などを歴任。仏教思想・インド哲学の第一人者。紫綬褒章、文化勲章、勲一等瑞宝章受章。人間ブッダの姿を明らかにするとともに、人類共通の普遍思想を求めて、仏教と西洋思想の比較思想研究を推進。1999年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本正行
89
日本の仏教、看板の書き換えというか、インドから中国や朝鮮を経て、伝来したというものの、所詮は、貴族以上の上級国民だけのものだった。近代になって、公家や武士以外の第三勢力として拡大、既存権力とも融合しつつ、農民階級から文化的要素をも含めつつ、非労働者としての抜け道としても存続した。それも生き方、漢文や思想にも親しみつつ、生きて行けた人も多かった。僧侶は、士農工商のどれでもな一が、一つの階級ではなかっただろうか。権力者から支援や保護も受け、ちゃんとした存在感もあっただろう。よかった、そういう生き方もできた。2024/07/27
HANA
66
『スッタニパータ』や『ダンマパダ』、『サンユッタ・ニカーヤ』、『涅槃経』等を手掛かりに、仏陀の一生や原始仏教の教義を説いた一冊。初心者向けで復習の意味も兼ねて読んだのだが、それでも『スッタニパータ』の滋味溢れる文章を読んでいると、なんとなく胸の奥に熱いものがこみ上げてくるな。原始仏典からの引用が多くそれを丁寧に注釈している為、これから仏教を学ぼうと考えている人は面白く読めるのではないかと思う。もちろん触れた事のある人も興味深く読める。「一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ。」2015/08/24
けやき
43
タイトルとサブタイトルの通り、ブッダの生涯と思想について書かれたもの。小説かと思ってたが、読んでみると小説ではなかった。生涯についてはサラッと触れてて、思想について詳しく書かれてた。2024/07/06
姉勤
42
ブッダの生涯と仏教の成立。生まれ、発心し、家を出で、苦を知り、悟り、説き、滅す。初期仏典と根本思想を交え、「人間」ブッダと歩く。支配階級のバラモンの権威がほころび、六師外道と呼ばれる思想が数多く花開いた二千数百年前のインドに現れ、まず自らをほどき、同志に説き、弟子に語り、請われれば教え、教団に伝わった。言葉は詩となり、文字となり、経になった。優秀な弟子や、支援者となる王や資本家が生まれていた時代に布教し得た事が、のちの宗教となる縁起。悟れば苦しみから逃れられるが、一方で寂しい気もする。だから寂滅か。2017/03/22
イプシロン
35
仏教は科学であるという言葉がある。この一冊はそうしたことをよく伝えている。つけたすなら、経典は小説であるとも言えるか。この本を読めば、経典とはブッダの生涯を描き切った小説だと納得できるだろう。その小説の中でブッダは様々な人に会い、いろいろなことを言う。それが哲学であり、思索による真理探究の仕方であったり、仏道の勧めであることが見えてくる。中村元の文章は柔らかくわかりやすいのだが、同じ内容が繰り返される部分が多いので、しつこいと感じる読者もあるだろう。しかし仏教の思想を知るには良い一冊なことは間違いない。2016/07/23