内容説明
宇治に隠棲する八の宮から姫君姉妹を託された薫は、自分を拒み続けて亡くなった姉のあげまきを忘れることができなかった。そんな薫に妹の小姫は、あげまきに似た異母妹浮舟の存在を明かす。浮舟を見た薫は、心を揺さぶられるが、小姫の夫の匂宮もまた興味を抱き、積極的な行動を起こす。板ばさみに苦悩した浮舟はある決意をした。本巻には「早蕨」から「夢の浮橋」を収録。梶田半古の挿画入り。
著者等紹介
与謝野晶子[ヨサノアキコ]
1878年、大阪府堺市生まれ。大恋愛の末に与謝野鉄幹と結婚。文芸美術雑誌『明星』で活躍し、第一歌集『みだれ髪』で一躍、情熱的な歌人として著名となる。その後、小説、随筆、評論、童話、戯曲など多岐にわたり活躍。教育活動にも熱心に取り組んだ。『源氏物語』は、幼少時代からの愛読書で、「新訳」のほか、「講義」(焼失)「全訳」と3度も訳業を手掛けている。1942年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
42
源氏物語の最後になります。落ち着いていて哀しみさえ湛えているように思えます。儚く終わるのもまた物語の結末として良いですね。豪華さはありませんが「わび・さび」の世界が広がっているように感じました。その丁寧な世界観は意識されて紡がれたのでしょう。1000年以上経っても変わらない人の心が落とし込まれている物語だからこそ魅了されるのですね。2025/04/11
ころこ
40
宇治十帖はあまり面白くない。匂宮、薫のキャラ設定が曖昧で、その影響か、大君、中君、浮舟の方に重心が移っている。人物の物理的な移動も少なく、三者の固定化した関係からの展開も少ない。物語の抑揚が乏しいので、やはり別作者の可能性が高いのではないか。前近代では作者の固有性は問題にならないし、サーガとしてみれば二次創作は正当な行為だから、第3部の転調は第一部が読まれてきた証だ。2025/04/10
Gotoran
20
与謝野(訳)源氏(物語)最終巻、「早蕨48帖」(薫の君25歳)~「夢浮橋54帖」(薫の君28歳)。源氏の君、亡き後、その義子の薫の君と源氏の外孫の匂宮を中心に宇治の八の宮の姫君たちとのたおやかな交流・生活が繰り広げられる。そんな中、薫の君と匂宮との板挟みで苦悩した挙句、取った浮舟の君の行動とその顛末が切なくも物悲しさを感じる。“もののあはれ”を垣間見る。また、機会を作って、田辺、谷崎、寂聴の源氏も読んでみたい。2013/08/24
花乃雪音
15
「早蕨」から「夢の浮橋」まで源氏物語の最後を収録。薫の恋は相手を見ているというより忘れ難い人の代わりを求めているように思える。浮舟が自分を見ていないことに失望して裏切ったなら一つの説得力があるが、そもそも二人は自分本意に生きているようだった。2021/11/23
記憶喪失した男
6
ほとんど何が起こってるのかわからない。これは連載小説だったのではないかと思った。2016/04/28