内容説明
舞が堪能な巫女、後白河法皇を魅了した傀儡女、静御前や祇王に代表される白拍子―芸能の時代といわれる中世は、多くの女性芸能者たちが活躍していた。仏教が支配階級の男性を中心とする一方、庶民とともに社会の底辺に生きた彼女たちが、果たしてきた役割とはなにか。貴重な史料、説話、能などを手がかりに、封建社会の発達につれ歴史の表舞台から姿を消していった女性芸能者たちの実像を追い、豊かな芸能の世界を掘り起こす。
目次
第1章 巫女―神への舞
第2章 傀儡女
第3章 遊女
第4章 白拍子女
第5章 曲舞女
第6章 瞽女と女芸人たち
終わりにかえて―出雲の阿国の登場
著者等紹介
脇田晴子[ワキタハルコ]
1934年西宮市生まれ。滋賀県立大学名誉教授。石川県立歴史博物館館長。文学博士。専攻は日本中世史、日本女性史。文化功労者。2010年文化勲章受章。『日本中世被差別民の研究』(岩波書店)で第25回角川源義賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nonberg
10
神代の巫女から、平安の遊芸を彩る傀儡子(くぐつ)、遊女(あそびめ)、白拍子(しらびょうし)、猿楽へ続く室町期の曲舞女(くせまいめ)など、歌舞が男主導に移る近世の前までの女芸能者に文芸と史的文献から光をあてます。古体の歌謡がどう受け継がれてきたのか。筆者自ら能を舞うため「吉野静」「斑女」「山姥」などの演目に残る影響も語られます。芸で身を立てる --『更級日記』に描かれた夜の足柄山中でみごとな歌を披露する三人の遊女をはじめ、祇王や仏御前、静御前などの姿からは、妖艶かつ芸の奥深さに根差す力強さが伝わってきます。2020/11/21
芙由
2
古事記のアメノウズメ、三輪山伝説、白拍子の静御前くらいしか予備知識がない状態で読んだが、更級日記とか山家集とか薄れてていた断片的な知識もつながっていってなかなかおもしろかった。能やら神楽やらまったく詳しくないが、古典文学の延長で楽しめるか。2021/02/14
shou
2
古事記などの神事に始まり、主に中世に存在した女性芸能者たちについて。後白河法皇と今様、義経と静御前などの例を文献に観て、彼女達の地位や実態を考察。世阿弥らに影響を残し、やがて江戸の封建制度のなかに消えていく彼女達の存在を共感を持って見送る。2015/02/08
コノヒト
1
芸能とはそもそも何なのだろうか。聴衆観衆の心を揺り動かす技のことだろうか。傀儡子、遊女、白拍子、という言葉を宮武外骨に教わった私なんぞは、それらを売笑婦の異名として認識してきた。芸を売る。淫を売る。いずれにしても客は男だ。そして巫女は神さまの感動を得るために舞う。夕方のテレビのニュースなんかで地域に根ざした神事祭礼を紹介することがままあるけれど、これからは見る目が変わりそうだ。けれども昨今の巫女はアルバイトだったりもするのだ。2016/03/30
getsuki
1
古事記の頃から、芸能者としての女性の位置づけは重要なものであった。特に中世は時の権力者に寵愛される例も多く見られていたと文献からも読み取れる。そんな女性芸能者について考察した一冊。より深く勉強したい人向けかな。2014/10/03