内容説明
平安時代末期、武士の道を捨て、家族を捨て、ただひたすらに和歌の道を究めるため、出家の道を選んだ西行。歌をどう詠むかではなく、歌になにを詠むかにこだわり続け、中世という新しい時代を切り開いた大歌人の生涯を、伝承歌を含め、項目で60首、全体で300余首の歌から丁寧に読み解く。桜をこよなく愛し、先人の跡を各地に訪ね、日本文化のさまざまな場面に足跡を残した西行という巨人の和歌をとことん楽しみ味わう1冊。
目次
出家
吉野
山家
高野
伊勢
熊野
四国
天皇
仏教
幼少
戦争
恋と月
神仏
数奇
終焉
伝承
著者等紹介
西澤美仁[ニシザワヨシヒト]
1953年愛知県生まれ。80年東京大学大学院修士課程修了。現在、上智大学文学部国文学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅてふぁん
56
個人的には新古今歌人よりも万葉歌人や古今集あたりの歌が好きなので西行の歌をじっくり読むのは初めて。西行といえば月と花の歌人という印象だったけど、さほど間違ってなかったかと。それにしてもこの本、難しくて読むのに時間がかかった。これでビギナーズ…なの?伝説多き人だということだけは理解した。『天降(くだ)る名を吹上の神ならば 雲晴れのきて光あらはせ/山家集748』は言霊の強さを感じることができて好き。さて、次は式子内親王でも読んでみようかな。2021/08/18
レアル
45
西行を学びたくてこの本を選ぶ。一番の興味は西行の生き様と和歌。西行の和歌にこそ西行の生き様が表れ、かつ感じられる気がする。そんな和歌を一つ一つ味わい堪能した。そんな西行の和歌と本をもう少し読んでみたい。2019/09/26
風に吹かれて
22
出家した武士ということで歌というより西行その人への関心が強かったのだが、しばらく前に辻邦生の『西行花伝』を読み、そして最近読んだ藤沢周『世阿弥 最後の花』で世阿弥の舞に西行の花を重ね合わせた情景の深さが印象深く、入門書であるけれど、西行の歌に接することにした。 いつどこでどんなときに詠まれた歌なのかということが丁寧に解説されていて手ごろな入門書だと思う。僧としての営みと併せ高野や伊勢など滞在先でのことなども盛り込まれていて多岐にわたりじっくり読ませる。 →2022/07/29
羽
22
先日、吉野山に桜を見に行き、奥千本の「西行庵」まで足を運んだ。家に帰ってすぐ本棚から『西行』を取り出した。二十三歳で出家した西行。唯一捨てきれなかったのは和歌だった。有名な歌「願わくは花のしたにて春死なむ そのきさらぎの望月のころ」は、釈迦が入滅した二月十五日を指している。西行は二月十六日に亡くなった。歌のとおりに亡くなれば、それこそ予告通りの完璧な往生だったかもしれない。だがあまりにも美しい花とあまりにも美しい月を最期に味わいたくて、その日一日現世に留まったのではないか。その解釈が素晴らしいと思った。2022/04/15
ロビン
19
「新古今和歌集」でよく知られ、平安から鎌倉にかけて生きた12世紀の歌人-鳥羽院に北面の武士として仕えたあと23歳で出家。時に定住しながらも旅のなかで多くの歌を詠んだー西行の和歌60首を時系列順に紹介した本だが、入門書にしては専門的な解説がされており、読みやすくはない。芭蕉や良寛に影響を与えた人ということで読んでみたが、出家の身でありながら「花」に代表される風雅への執着心が並々ならない人であり、「仏教に強く憧れながら、決してその仏教に逃げ込まない、矛盾や揺れを構わずに表現する」不思議な面白さの人であった。2021/04/13