内容説明
女優志望の泰子には、16歳の詩人中原中也との運命的な出逢いがあり、さらに評論家小林秀雄との壮絶な出逢いと別れがあった。「奇怪な三角関係」(小林秀雄)といわれた文学史に残る伝説の“宿命の女”長谷川泰子が語る、衝撃の告白的自伝。「グレタ・ガルボに似た女性」としても注目される。昭和初期の文壇を知る資料として貴重な一書。
目次
1 風が立ち、浪が騒ぎ(同棲;広島女学校 ほか)
2 これがどうならうと(詩人修行;相聞 ほか)
3 私の聖母!(築地小劇場;松竹蒲田 ほか)
4 かくは悲しく生きん世に(子供;グレタ・ガルボに似た女 ほか)
5 せめて死の時には(結婚;追悼 ほか)
著者等紹介
長谷川泰子[ハセガワヤスコ]
1904年、広島県生まれ。女優になるため家出。京都で16歳の中原中也を知り、同棲して上京後、中也の友人小林秀雄と同棲。小林と離別後松竹キネマに入社。「グレタ・ガルボに似た女性」で注目される。1993年、88歳で死去
村上護[ムラカミマモル]
1941年、愛媛県生まれ。愛媛大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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里愛乍
51
中原中也、小林秀雄との奇怪な三角関係でよく知られる長谷川泰子の告白的自伝。聞きしに勝る中也のやんちゃぶりですが、なかなか如何してこの泰子女史も相当にロックな女性であります。そして小林の献身ぶりも男前が上がります。ここまでくると大岡昇平氏の中也本も読んでみたくなりますね。2017/09/27
ヒロミ
38
「お前の無邪気は罪だよ」かつて恋人の中原中也から云われたという長谷川泰子。数多の男の「宿命の女」だった長谷川泰子さんの語り下ろし自伝。無邪気というか泰子さんの場合は恋愛が処世術だったようにも思える。中也とは彼が17歳泰子さんが20歳からの付き合いになり泰子さんが小林秀雄の元に走ったあとも中也は泰子さんを諦めていなかった。彼女の発言の数々から中也がいかに泰子さんに執着していたかが伺え正直ちょっとコワイ。富豪と結婚したり宗教に走ったり激しい泰子さんの人生。ご本人が至ってケロリとされているのが救いか。2015/08/09
kaoriction@感想&本読みやや復活傾向
22
真っ直ぐで、ざっくばらんで、無邪気。理解しがたい女だが、グレタ・ガルボに似て、飄々とするりと溢れ落ちそうで。そんな彼女の何かが中也と小林、名を残した大きな男二人を魅了したのだろう。名だたる作家や文化人の名前が出るわ出るわ。その隙間をするりと魚の如く泳ぎ、通り過ぎる泰子。自分があるようで、ない。泰子が恋い焦がれ愛していたのは、中也ではなく小林の方だったとは少々衝撃。中也との愛はあまり語られていない。中也の泰子に対する愛は感じられたが。とはいえ、昭和初期の文壇、文化を知る資料として、やはり貴重な一冊だと思う。2019/04/17
JUN
21
中原中也氏と同棲し、その後、彼の友人であった小林秀雄氏とも同棲し、奇妙な三角関係となる。彼女が70歳ごろに、彼女から直接取材した事柄を叙述的にまとめた内容。本人はそんなつもりはないのだろうが、非常にざっくばらんな性格で、どの男性に対しても同様の接し方をするので、相手からすると好意がある様にも感じられてしまい、たくさんの男性から支持を得て、また金銭面などでも支えてもらえたのか?いずれにしても中原中也氏の彼女に対する一途な思いは伝わってきた。2014/04/01
Maki
20
ずっとずっと読みたかった本。やっと読んで、胸がいっぱい。タイトルとは裏腹に文面から長谷川さんはまったく中也に関心がなかったように感じられる。それでも最後の長谷川さんの詩「酵母」の想いを知ると、ふたりの関係は常識はずれではあるけれど、唯一無二であったことがわかる。友に奪われたにも関わらず、ずっと、亭主面して気にかけて手紙を送ったり世話を焼いたり叱りつけたり、他の男の子供の面倒をみたりまでしている中也を語ってくれて、酒乱の気難しい詩人といふだけで終わらせずにこの本が書かれたことを嬉しく思う。2018/12/19
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