内容説明
能の大成者、世阿弥の能楽論は、衰えることのない不変の花による、役者としての舞台の成功を求めるための理論といえる。能を演じるための実践的な内容のみならず、美の本質に迫る芸術論としての価値も高く、「まことの花」「時分の花」「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」など有名な文言も多く擁されている。あわせて、幽玄能の構造を解き明かす能作の書『三道』を収録。世阿弥の能楽論を詳しく読み解く1冊。
目次
風姿花伝第一 年来稽古条々
風姿花伝第二 物学条々
風姿花伝第三 問答条々
風姿花伝第四 神儀
奥義
花伝第六 花修
花伝第七 別紙口伝
三道(能・作・書条々;三体作書条々)
著者等紹介
竹本幹夫[タケモトミキオ]
1948年東京生まれ。早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。専攻は中世日本文学・能楽研究。実践女子大学を経て、早稲田大学文学学術院教授・坪内博士記念演劇博物館館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
509
能の真髄を「花」にたとえて、世阿弥が語り尽くした伝書。わたしのようなにわかファンが気楽に取る内容を軽く超越していた。原文・現代語訳・解説という構成がありがたい。(わたしの推しはワキ方なので)途中のシテ方礼賛に少々引いてしまった感を差し引いても、能楽にとどまらずすべての芸能ごと、ひいてはビジネス書にも通ずる名著。再読必至。2021/07/17
優希
101
能の大成者・世阿弥による能楽論が2編おさめられていますが、どちらも役者としての舞台の成功へと導くための能楽論に思えました。美の本質に迫ることで、日本の伝統芸を極みへと誘う実践論となっているのが興味深いところです。能を知らなくても、芸事に生涯をかけた情熱を感じることができるのではないでしょうか。2016/07/22
ころこ
42
分厚くて怯むが、本文、現代語訳、解説の順で本文2~3ページごとに読み進めることができる。解説では論旨の混同や他の箇所とのつながりから書き換えられたところを指摘するなどあるが、角川シリーズの方針なのか平易でストレスなく読める。能作論書である『三道』があり、巻末に長い解説が付してある。世阿弥の生涯と『風姿花伝』と『三道』の解説になっている。解説は細かいので、読み飛ばしてウィキで補っても問題ない。世阿弥に惹かれるのは言うまでもなく魅力を「花」と表現したことにある。「能に花を知る事、この条々を見るに、無上第一なり2022/11/11
紫陽花と雨
30
二条良基に名付けられた幼名「藤若」才能豊かな美少年は、将軍・足利義満の後ろ盾もあり、父・観阿弥の英才教育を受け育つ、現代でも彼の作品は数多く残る、能を作り演じる者、世阿弥。その世阿弥の残した、本来は秘伝の書である能の道、芸の道をといた「風姿花伝」岩波版も読みましたが、こちらは現代語訳と解説が1項目ずつあり、非常にわかりやすかったです。また、世阿弥の著作・能の一覧、家系図までも記載の充実した1冊。最後の解説では簡単な世阿弥の人生も…これだけの人が島流しとは…。いつか本物の能を見に行きたい。2021/06/13
マウリツィウス
27
【『詩学』/『花伝書』】アリストテレスとの根幹相違を内包した《劇場》概念、つまり舞台構造に意義を見出すも国民性を統一化した視点はソフォクレスたちと様相を異にする。つまり、原作集合論の再現記録ではなくその反復でもない。古典主義と同様の一貫主題を設定定義することで《物語》因習を現代においても批判している。世阿弥の試みた方法論構築は修養論だけではなく信仰論にも還元し得るものであり、新たなる見解によって定義されるべき問題と称せる。古代古典との関連対応論により再評価される日本古典芸能の集約文書が『風姿花伝』と言及。2013/06/16