感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
LUNE MER
14
女三の宮と柏木の密通事件は、なんでこんな時代の日本文学でこんな作品が存在し得たのか?というオーパーツ並の展開だと、再読するほどに思う。柏木亡き後、堅物として描かれてきた夕霧が未亡人である女二宮に懸想する様も賛否両論はあろうが、柏木に落葉呼ばわりされた彼女が人に愛される人生を得られたことには違いないので私個人としては「あり」。そしていよいよ第二部の、というより光源氏と紫の上のラストである「御法」「幻」の怒涛の展開。何より「幻」での、紫の上没後の翌年一年間の筆運びがこれまたオーパーツ。終幕の美しさ極まり。2020/10/05
LUNE MER
12
「夕霧」を再読。光源氏の長男である夕霧の通称の由来となる帖で彼のメイン回ではあるのだが主たる内容は親友柏木の未亡人である女二宮への猛烈なアプローチの顛末。父・光源氏と第三部の薫&匂宮の影に隠れてしまっている印象があるのだが、父・光源氏とは異なり、雲居の雁、藤典侍(惟光の娘)そして女二宮のわずか(?)三人の女性としか深い仲になっていないにも関わらず十人以上の子宝に恵まれている辺、さりげなく凄いキャラだったりする。第三部での何とか姫を薫か匂宮に嫁がせようと画策する困ったお偉いさんという立ち位置も好き。2023/10/09
ヒロミ
8
小学館の全集とゆきつ戻りつ読了。こちらは通勤電車の中で読むのにうってつけ。玉上先生の校訂は分かりやすくて親切だと思う。花散里と夕霧のやり取りがニヤリとしてしまう。次巻からいよいよ孫世代編へ突入です。2014/08/30
ヤベ
4
ついに源氏が死んだ。長々とこの物語を読み続けるうちに源氏が自分にとってパーソナルな人物になっていたから源氏の死はショックだった。源氏物語は源氏の情緒を主題に書くから読む人は源氏を生きた人として捉えられる。仮に源氏物語が社会を焦点に当てた書きぶりであったなら、読む人は源氏をある時代の芸術精神の象徴とのみ見るだろうし、源氏物語を平家物語の平安版として受容すると思う。2022/02/08
ヤベ
3
幻では沢山の和歌が詠まれる。ただ、今までは二人以上で読まれ合っていたのが、初めて源氏が一人で風景物に向かって詠む。そして源氏としての最後の一個前の歌を法師と詠み合ってから、辞世の句をまた一人で詠む。紫の上を失って呆然とした自分の心を歌で鎮めて、出家の準備をしているように読めてよかった。2023/02/06