出版社内容情報
近松 門左衛門[チカマツ モンザエモン]
著・文・その他
諏訪 春雄[スワ ハルオ]
著・文・その他
内容説明
徳兵衛とお初(曾根崎心中)、忠兵衛と梅川(冥途の飛脚)、治兵衛と小春(心中天の網島)。恋仲になった男と女たち。女はいずれも苦界に堕ちた遊女。男は女を救いたい。募る恋情、行く手を阻む浮き世のしがらみ、義理、人情。追い詰められた二人を待ち受ける運命とは…。元禄16年の大坂で実際に起きた心中事件を材にとった「曾根崎心中」ほか、極限の男女を描いた近松門左衛門の世話物浄瑠璃の傑作三編を所収。「あらすじ」付きで読みやすい現代語訳付き。
著者等紹介
諏訪春雄[スワハルオ]
1934年、新潟県生まれ。学習院大学名誉教授。新潟大学人文学部卒業・東京大学大学院博士課程修了・文学博士。専攻は日本近世文学・比較民俗学。近年ではアジアの民俗調査を行い、幅広い執筆活動を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
85
子供の頃にジュニア版で読んだ時は、ダメ男に献身的に尽くす女の機微や信頼していた人にお金を貸して貰っても返しさないどころか、ばっくれる心情も分からなかった。それは今も変わらない。苦界にいる女たちは惚れた男に夢を見るしかなかったのか。浮世では苦しくとも来世では・・・。そんな淡くも鮮烈な望みを抱く彼女達の儚さに対し、その場しのぎでやり過ごす内にのっぴきならない状況までに自分を追い込む男のなんて弱いことか。そして愛に殉じたと信じた女達の死に様の余りの惨たらしさは無念としか言えない。2018/05/01
吉田あや
68
「曾根崎心中」だけでなく、近松門左衛門の代表的心中作品「冥途の飛脚」「心中天の網島」が収められた本書。前半は底本に忠実な形で現代訳、後半に底本が収録されているので、当時の気配や香りも味わうことができた。時代が違っても変わらない普遍的なことと同時に、人情と軽薄の相対する様を読むにつけ、恋とはいつの時代も悲劇であり喜劇であるんだなあと視点を遠ざけたり近づけたりしながら、短い中で物語を立体的に楽しませる近松門左衛門の戯作者としての力量に感動した。(⇒)2019/08/31
NAO
68
「曽根崎心中」なんといっても、足元の縁下に隠れている徳兵衛にお初が足の先で「一緒に死ぬ覚悟があるか」と確認する場面がいい。お初の優しさ、徳兵衛の無念さがにじみだすお初と徳兵衛の純愛の極みといったところ。「心中天の網島」恋仲の二人より、恋敵の遊女相手でも義理を通そうとする妻のおさんの心情が胸を打つ。一方、髷を切り落とし「もう坊主になったからには妻子への義理はない」と言ってのける治兵衛の薄情さ、身勝手さ。「曽根崎心中」の観音霊場巡り、「心中天の網島」の名残の橋づくしなどの「道行き」も五七調の流麗な文が美しい。2018/05/14
れみ
50
近松門左衛門による浄瑠璃のなかから、心中や犯罪を扱った世話物三編。遊女とその客が恋仲になって抜き差しならない状況に陥って心中しよう…となるのはすべて同じ。同じだけどお芝居として見るにはそのパターン化されているところに安心感があるかも。だけど本文は義太夫節の感じが分からないと少し掴みづらい部分もある。やっぱり演じられるのを見聞きしないとなあ。2014/12/19
Nyah
46
天満屋お抱え遊女お初は、徳兵衛と数年越しの付合いで深く愛し合っている。徳兵衛が勤める店の主人姪と持参金付きの結婚話が出ていたが、お初がいると、その話を断ろうとしたが、持参金返金の上、大阪から出ていけと言われる。実家から持参金を取返した矢先、兄弟同然の九平次に請われ大金を貸してしまう。しかしこれは詐欺であり、貸した証拠がないと返金されず。二人は死ぬしかないと追い詰められ、曽根崎の森で心中する。若い二人は冷静になってモノを考えられない。心中なんてヒトゴトだったのにあっという間に追い詰められて‥。恋に酔うな😫2023/11/12