出版社内容情報
上田 秋成[ウエダ アキナリ]
著・文・その他
鵜月 洋[ウヅキ ヒロシ]
著・文・その他
内容説明
巷に跋扈する異界の者たちを呼び寄せる深い闇の世界を、卓越した筆致をもって描ききった秋成の本格怪異小説の数々。崇徳院が眠る白峯の御陵を訪ねた西行法師の前に現れたその人は…(白峯)。男同士の真の友情は互いの危機において試された(菊花の約)。戦乱の世に7年もの間、家を留守にした男が故郷に帰って見たものは…(浅茅が宿)。男が出会った世にも美しい女の正体は蛇であった(蛇性の婬)など、珠玉の全九編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
106
面白かったです。巷に漂う異界と闇の世界が美しい。江戸時代においては幻想怪奇小説として読まれていたのでしょう。古典ならではの怪談の香りに酔わされます。口語訳より原文のほうがより幻想的な雰囲気を感じました。いつの時代も怪談は人を惹きつけるものだと感じました。妖怪の存在が信じられていた時代ではあれど、人間の業が1番恐ろしいことを見せてきます。怪異から人間心理の深いところを写し取った作品と言えると思いました。2016/09/17
かぷち
70
小泉八雲『怪談』と並んで日本人ならほぼ誰でも知ってる有名作。最初の「白峰」からかなりの歴史的教養を試される、原文で読んでいたが分からず現代語訳を先に読み再び原文にチャレンジ。するとなんとも言えない味わい深さ、趣を感じいとあはれなり。何度も何度も読み返したくなる。この世に未練を残して亡くなった者が幽霊となる、その情念の深さ、人の業はいつの時代も変わらぬものですね。そんな普遍的なテーマを怪談という形をとって扱っている。思ったより怖くはなく美しくも儚い、珠玉の一冊です。ボロボロになるまで再読するだろうな。2024/07/02
アルピニア
62
原文、訳文とも全話通して読むのは初めてだが、どの話も既読感を覚えるのは多くの作家がこの作品をもとにした話を紡いでいるからだろう。どの作品も怖さだけでなく哀しさも漂う。特に「青頭巾」では、精進と執着は方向が違うだけなのでは・・と嘆息した。序文で水滸伝や源氏物語を引き合いに出しているが、この物語も長く読み継がれて後世の文化に影響を与えていることは感慨深い。さらに、この文庫では原本の挿画が使われているのも良かった。訳文を読んでから原文を音読すると内容を思い浮かべながら、流麗な言葉の流れを楽しむことができた。→2019/04/08
佐島楓
58
「浅茅が宿」が課題になっているため読んだ。まだちょっと内容をつかめていないが、当時の人々の苦しみを等身大で感じ取れた。何回かは精読しよう。2016/02/23
がらくたどん
55
青柳さんの『オール電化・雨月物語』と併読。前半現代語訳・後半原文併載。たまたま手持ちの「雨月」の解説書がこれだったという理由が大きいが、ちゃんと核心場面の挿絵が引用されているのと主要典拠が紹介されているのが気に入っている。各話の冒頭につく「あらすじ」も短編なので要不要は謎だが、読もうか迷う場合は興をそそられるかも。私は妙に予防線を張りながら挑戦的な秋成の「序」が好き。「本当の話だと信じる人がいるわけないじゃん」と言いつつ解説氏の言うように「原典わかるかね?」という読者の教養への挑戦が薄っすら見えて愉快。2025/04/19