内容説明
本格的貨幣経済時代を迎えた江戸前期の市井の人々の、金と物欲にまつわる悲喜劇を描く経済小説。舞台は日本全国に及び、商売成功の方法を述べた実用書の面もあわせもつ当時のベストセラー。成功談と失敗談の双方を描きながら、金銀万能の世相を活写して、町人生活の諸相をあぶり出す傑作。読みやすい現代語訳、原文と詳細な脚注、版本に収められた挿絵とその解説、各編ごとの解説、全体についての総解説で構成する決定版。
目次
初午は乗って来る仕合せ
二代目に破る扇の風
浪風静かに神通丸
昔は掛算今は当座銀
世は欲の入札に仕合せ
世界の借屋大将
怪我の冬神鳴
才覚を笠に着る大黒
天狗は家名風車
舟人馬かた鐙屋の庭〔ほか〕
著者等紹介
堀切実[ホリキリミノル]
1934年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。文学博士。フェリス女学院大学助教授、早稲田大学教授を経て、早稲田大学名誉教授。専攻は、近世文学・俳文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アルピニア
49
第12回日本の古典を読む(2017年12月)https://bookmeter.com/events/4016 富を手に入れた人々(長者)を描いた物語集。知恵を絞り仕事に励み倹約してお金を貯める。そこまではよいのだがその後が実に様々。豪勢に使って落ちぶれたり、残しても、子がすぐに使い果たしてしまったり、あるいは周りに施して慕われる者も。印象深かったのは、こんな贅沢をよく思いつくものだと呆れた「風呂釜の大臣」、凄まじい金銀への執着を描いた「茶の十徳も一度に皆」。お店の暖簾や場面が描かれている挿絵も良かった。2017/12/29
佐島楓
46
課題用参考文献。とても面白い。独自の切り口でレポートを書ければよいが。2016/02/20
シュラフ
37
せっかくの人生なのだから若い時から頑張って長者になれ、という西鶴の主張にいろいろと意見があろう。しかし、たんに金儲けの方法を伝授しようとするだけでなく、人の生きざまを説いているから現代まで残る名著となる。大事なのは、道徳を大切にし神仏をまつること。いくら商売のためだからといって人をだますことなどもってのほか。博打で勝ったり、詐欺商法で儲けたり、入り婿となって金持ちになったて嬉しくない。まともに働いて金持ちになるのが、本当の出世なんだ。そして老後になって安楽を得るのが人の生きざま、と言い切るすがすがしさ。2017/09/03
33 kouch
25
江戸町民のブログ。商いの栄枯盛衰を、教訓も交えながら西鶴視点で綴る。渋沢栄一の論語と算盤に通じるものを感じた。話は起承転結されてなくて、急展開することも多い。ただ、それがむしろ日記のようなリアリティを産んでおり江戸の情景や人情を味わえるつくりになっている。本書に続いて世間胸算用や好色五人女、一代男も是非読んでみたくなった。2023/04/14
ひさしぶり
25
元禄文学、浮世草子の町人物。実用的な教訓を折り混ぜ成功,失敗の商人道が描かれている。放蕩2代目がすったもんだでざまあみろ、で終わらずひと旗揚げるみたいな話もあり多彩。渡世の道は草の種のようにいくらでもあるって。金持ちになる長者丸の処方が早起き5両、家業20両、夜業8両、倹約10両、達者7両を調合し、さらに毒断(●美食と好色と絹物を普段着にすること●女房を乗り物に乗せて贅沢をさせ‥●息子に鼓や太鼓などの遊芸を習わすこと●勧進相撲の資本主になること‥等々)🤔 話に肉付けしてTVドラマにしたら面白いかも。2021/06/19
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