出版社内容情報
近代文学史の科学随筆の名手による短文集の傑作。「電車と風呂」「鼠と猫」「石油ラムプ」「流言蜚語」「珈琲哲学序説」他30篇。写生文を始めた頃から昭和八年まで、寅彦の鳥瞰図ともいうべき作品を収録。
内容説明
「宗教は往々人を酩酊させ官能と理性を麻痺させる点で酒に似ている。そうして、珈琲の効果は官能を鋭敏にし洞察と認識を透明にする点でいくらか哲学に似ている」(「珈琲哲学序説」)。近代文学史に輝く科学随筆の名手による短文の傑作選。写生文を始めた頃から昭和8年まで、寅彦の鳥瞰図ともいうべき作品を収録する。表題作および「電車と風呂」「鼠と猫」「石油ランプ」「流言蜚語」「病院風景」等30篇。
目次
イタリア人
まじょりか皿
電車と風呂
田園雑感
鼠と猫
ある日の経験
夢
断片1
雑記
ある幻想曲の序
石油ランプ
解かれた象
鑢屑
流言ひ語
議会の印象
路傍の草
断片2
備忘録
仁科狂想行進曲
化物の進化
野球時代
映画時代
ステッキ
ロプ・ノールその他
北氷洋の氷の破れる音
鉛をかじる虫
銀座アルプス
珈琲哲学序説
空想日録
病院風景
著者等紹介
寺田寅彦[テラダトラヒコ]
1878~1935年。東京生まれ、高知県で育つ。東京帝国大学物理学科卒業。理学博士。東京帝国大学教授、帝国学士院会員などを歴任。東京帝国大学地震研究所、理化学研究所の研究員としても活躍。物理学者、随筆家、俳人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鱒子
67
友人本 寺田寅彦は科学と文学を融合させた人物だ、と誰が書いたのか忘れてしまいましたが、まさにその通りだと思います。知性と品の良さ、そして飄々とししつつも真摯な人柄が見える、素敵な随筆集です。巻末の角川源義氏の解説(寅彦を中心としているが、あちこち話が飛ぶのでハッキリ言ってかなり読みにくい)、さらにその後の解説 有馬朗人氏の2人ともが「団栗」に言及していますが、本書に「団栗」は未収録なのです。ここだけはめっちゃ残念。2020/10/26
LNGMN
11
随筆集。身近な事柄を科学的視点で分析しつつも、古今東西の思想を行き来しながら綴られた詩情あふれる文章が素敵。「一杯のコーヒーは自分のための哲学」といったパワーワードが並ぶ『珈琲哲学序説』が好きだ。2022/10/04
Inzaghico (Etsuko Oshita)
10
上野の象が浅草花やしきに引っ越していった顛末からいろいろ想像をめぐらせる「解かれた象」は一読に値する。関東大震災のときに暴徒が井戸に毒を入れたという虚言について書いた「流言蜚語」もしかり。科学的に考えればそんなことありえないだろう、という冷静さをもつことの重要性は、今なお変わらない。いや、重要性は今のほうが増しているだろう。飼い猫の好き嫌いを割とはっきり書いていて、好かれていない猫が不憫でならない(笑)。ガマ蛙とかネズミとか捕ってたのねえ、昔の猫は。2021/09/15
かっくん
4
物理学者である寺田寅彦の随筆集。日々の生活の中から科学の発展に資するものを見つけ出す姿勢には凄みを感じる。基礎化学を軽んじる現在の風潮を寺田寅彦が見たら、なんて言うだろうか。2024/05/13
yambou215
3
著者は明治生まれの人なので、文体が少々古くさいのは致し方ないが、題材の面白さ、鋭い人間観察など、さすがは随筆の名手と思わせる文章が多い。 帝国議会を傍聴したときの様子なんか、いつの時代も議会の議事は変わらないようで興味深かった。2020/06/17