出版社内容情報
「この天上の世界は光明そのものである」――大拙が挑む、華厳の思想。
内容説明
「単なる大乗仏教哲学ということでなしに、世界思想史上の一期を画するもの」。世界的な仏教学者である鈴木大拙がこう語り注目したもの、それが華厳の教えであった。『華厳経』で描かれる、煌びやかな光に包まれた天上の世界。その語りの境地の本質とはなにか。我々はどうすればその地に辿り着くことができるのか。「東方哲学」の創始者が、その中心に据えた概念の一つ、「華厳」について自由闊達に論じる。
目次
第1篇 禅から華厳経へ
第2篇 華厳経、菩薩理想及び仏陀
第3篇 菩薩の住拠
第4篇 華厳経における発菩提心
著者等紹介
鈴木大拙[スズキダイセツ]
本名、貞太郎。1870年、金沢市生まれ。東京帝国大学在学中に、円覚寺に参禅し、大拙の居士号を受ける。97年、渡米。帰国後、東京帝国大学、学習院、大谷大学で教鞭を執るほか、英文雑誌を創刊し、海外に仏教や禅思想を発信した。1936年、世界信仰大会に日本代表として出席。イギリス、アメリカの諸大学で教壇に立った。66年没
杉平〓智[スギヒラシズトシ]
1899年、山梨県東山梨郡等々力村(現・甲州市)生まれ。大谷大学専修科・東京帝国大学英文科を卒業後、大谷大学・同朋大学で教鞭を執る。1921年、大谷大学専修科1年の時、鈴木大拙に師事。84年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yutaro sata
32
この表現世界の、無時間性、無礙、光。言葉は世界を分ける、ゆえに分けえないことを主張したいとき、その方途が過激になると、言葉で語らず、残さず、ということになりかねない。それではしぼむ。そこで、不や、延々の列挙、という姿、それ自体は有限であるもので、無限の世界を後ろに存在させる、垣間見させる、そういう表現世界を成した。と今のところは読んだ。2022/11/09
roughfractus02
9
松は竹、竹は松であり、しかも松は松、竹は竹である。華厳思想は事と事の間の障害を外し、両者が浸透する宇宙を現出させる。「事事無礙」と呼ぶこの宇宙は物や事からできた世界の奥へ思考を進める。法蔵は則天武后にこのイメージを合わせ鏡に映る蝋燭の火に喩えた。この蝋燭の火が無限反射するイメージは、数学では自己相似的なフラクタル集合f(f(x))に解釈可能だが、「事事無礙」では蝋燭の火(変数)が一つでなく、森羅万象が無限反射する。本書は「入法界品」中の「毘盧舎那荘厳蔵楼閣」を中心に、この大楼閣宇宙から自己とは何かと問う。2021/03/01