出版社内容情報
もうひとつの〈北朝鮮〉を舞台に描く、恋と挫折、本当の自由をめぐる物語「ここは日本ではありません」──全寮制、日本語禁止、無断外出厳禁。大阪下町育ちのミヨンが飛びこんだ「大学」、朝鮮大学校は、高い塀の中だった。東京に実在するもうひとつの〈北朝鮮〉を舞台に描かれる、恋と挫折、そして本当の自由をめぐる物語。映画「かぞくのくに」「ディア・ピョンヤン」の監督が自身の体験をもとに書き下ろす、初の小説。
ヤン ヨンヒ[ヤン ヨンヒ]
著・文・その他
内容説明
全寮制、日本語禁止、無断外出厳禁。大阪下町育ちのミヨンが飛びこんだ“大学”は高い塀の中だった―。そびえる壁と、外に広がる世界。恋と出会い、挫折、そして卒業。境界を疑うすべての人の胸に響く、本当の自由をめぐる物語。
著者等紹介
ヤンヨンヒ[ヤンヨンヒ]
1964年、大阪生まれ。映画監督。コリアン二世。米国ニューヨーク・ニュースクール大学大学院修了。朝鮮大学校文学部卒業後、大阪朝鮮高級学校の国語教師を経て、劇団員、ラジオパーソナリティ、ビデオジャーナリストとして活動。監督作品として、ドキュメンタリー映画に「ディア・ピョンヤン」(2005年、サンダンス映画祭審査員特別賞ほか)、「愛しきソナ」(2009年)、劇映画に「かぞくのくに」(2012年、ベルリン国際映画祭国際アートシアター連盟賞、読売文学賞戯曲・シナリオ賞ほか)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
105
日本にあって日本でない世界で普通に恋愛して悩んだりすることを妨げる民族という壁。あらゆる制約にも挫けない主人公に好感が持てた。祖国訪問はとても辛かった。外国人専用列車の窓にやつれた母子が手を伸ばす。リンゴが見えたから。案内役から絶対に窓を開けるなと言われたのは、もし窓から投げ与えていたら暴行され、あの母子は怪我を負うだけだからとわかった。再開できた姉との会話が切なく素敵で仕方ない。彼らのおかれた現実を垣間見れた。国家イコール個人ではない。もう来なくていいから別の世界をたくさん見ていい大人になりなさいに涙。2018/04/05
なゆ
78
朝鮮大学校、それは東京に実在するもうひとつの〈北朝鮮〉。著者のヤン ヨンヒさんは、映画「かぞくのくに」の監督。経歴から見ても、まさに自伝的小説のようだ。1983年、大阪下町育ちのミヨンは、東京で映画や演劇三昧の大学生活を夢見て、全寮制の朝鮮大学校に進学する。が!そこは自由など何もない、総聯組織を担う幹部養成機関だった。そんな所で、かつてない問題児と言われながらも真正面から抵抗する、ミヨンの四年間。総括だらけの日々、外出許可証、卒業旅行は当然北朝鮮と、強烈な思想教育に負けずに自分をもち続けたミヨンに拍手! 2018/07/19
taiko
58
30年以上前の朝鮮大学校の在校生ミヨンの4年間。…朝鮮大学校に対する認識は皆無、とても興味深ったです。Wikiで見ると、日本における朝鮮学校の最高教育機関に位置づけられているとのこと。修学旅行で祖国を訪れた時の待遇の良さにそれが現れていたのかもと思いました。日本で暮らしてはいるものの、大学の中は日本ではないという現実に違和感を感じ続けるミヨン。自由でいたいけれど、自分が朝鮮人であることを忘れて欲しくない、その気持ちの行き違いで黒木との関係が終わってしまったことが残念で仕方がなかったです。→続く 2018/11/20
しゃが
54
全寮制、日本語もジーンズも禁止、外出は許可制、消灯後の公衆電話、卒業旅行は北朝鮮、組織委託という名の卒業後の進路配置…があった1983~87の朝鮮大学校を描いている。著者ヤンさんの自伝的小説だが、知らなかったことも随分以前だし、フィクションとしてかノンフィクションとして読み進めていいのか、迷うシーンがいっぱいだった。恋や葛藤という青春ものなのだが、そこには在日というバックグラウンドが大きな部分を占めていた。興味深く読んだが、ただ登場人物や事象の典型的、顕著的なところがあり、もっと書き込んでほしかった。2018/09/27
kawa
47
「朝鮮大学校で生活している貴女は、共和国で、すなわち朝鮮民主主義人民共和国で生きているのだと自覚しなさい!」おそらく自叙伝的小説と思われる主人公が、入学時に叱責される。驚愕するような話が次々と、そして、それに内心反発する主人公ミヨン、ついに卒業式にその反発が頂点に…。「在日だとか朝鮮人だとか、そういうこと気にしていないから」恋人からの一言にも傷つく主人公。ウーン、これにも考えさせられた。2019/01/06
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