内容説明
ある地方都市のマンションで、男女の死体が発見された。遺体は暴力団藍原組組員とその情婦。だが、藍原組では以前から組員が連続不審死を遂げていた。しかも、「ガネーシャ」と名乗る人物から「睡眠を差し出せ」という奇妙な脅迫メールが…。一方、街の下に眠る暗渠には、“王子”他6名のホームレスが社会と隔絶して暮らしていた。奇妙な連続殺人は彼らの仕業なのか?ふたつの世界で謎が交錯する超本格ミステリ。
著者等紹介
初野晴[ハツノセイ]
1973年静岡県出身。法政大学工学部卒。2002年、『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。ファンタジーとミステリを融合した独特の世界観で注目を浴びる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アイゼナハ@灯れ松明の火
58
血と暴力で黒く塗り潰された上側の世界に君臨する王と側近の物語と、幻想的だが光の射さぬ下側の世界に迷い込んだ女性の物語が交錯する。それは必然と呼ぶにはあまりにも重く、そして悲しい物語の幕開け。赦すことなどできはしない。しかし、復讐は絶対に何も産み出しはしない。大いなる矛盾を抱えながらも、生きていくこと、記憶を紡いでいくことこそが正解なんだと、いつか悟れる日がくるのだろうか。2011/03/10
kariya
35
異常繁殖した緑と黄の鳥が覆う空の下、全てを無残に壊されたかつての子供達の復讐が幕を開ける。一帯を仕切る暴力団組員に不審死が続き、抗争の火種が燻り始め、幹部らに暗号めいた脅迫メールが届く。地下を巡る暗渠では、記憶を失った女が”王子”を戴くホームレス達に助けられる。二つの世界の関わりは。暴力的な描写は多いが、この不思議な迫力ある作品の印象は乾いていて哀しい。また不快としか見えない人物達が、唯一の友情に向ける誠実さと愛情が胸に残る。上側の世界にも漆黒の闇がある。けれど翼を傷めたあのヒナはいつか空を舞うだろう。2009/12/28
もち
27
「星をなくしたの。私より、かわいそうな娘よ」◆街の地下深くに広がる暗渠。ここには、<王子><時計師><墓掘り>などの『職業の名』を持つホームレスが住んでいる。一方地上では、暴力団員が次々と変死する怪事件が発生。犯人は脅迫状で、『睡眠を差し出せ』と要求していた。二つの世界に横たわる、壮絶な思念と真実とは――■寓話的・神話的な意匠によって紡がれるのは、酷薄なまでに現実を切り取った物語。ファンタジーとノワールが融合したような、無二の読み応え。2014/12/26
イタリアンでこちん
22
角川文庫ミステリーフェアで手にする。ミステリーとファンタジーの融合と言えば、初野晴さん。神秘と謎と不可思議が幻想の舞台で奏でるハウダニットとフーダニットをお楽しみください。眠ったまま死んでしまう原因不明の連続変死、そして怪文書。真暗闇の巨大暗渠に暮らす者達。上と下の世界。暴力団組織の抗争、冷酷非情。片やおとぎ話の出演者の様な王子、画家、墓堀り、楽器職人。お話が進むに連れて二つの世界の関連性がやがて・・・扱う話題は暗くて痛みを伴い目を背けたくなりますが、独特の世界観、巧みなプロット、相関対比バランス 続2009/11/21
こっぺ
20
上と下での物語の交錯。物語の創り込み感が好み。上の暴力丸出しなストーリに比べて下の暗くも「お話」チックな雰囲気のギャップがいいです。ミステリかと問われれば、それは違うかと感じるけれど、それはそれ、これはこれ。物語は面白い。2009/12/24
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- 和書
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