内容説明
黒船の来航以来、高まる外圧と倒幕勢力の伸長により瓦解寸前の徳川幕府を支えた男がいた。その名は小栗上野介忠順。小栗は対ドル為替レートの不均衡や、相次ぐ賠償問題を含む外交ばかりでなく、財政再建や軍隊の近代化にも獅子奮迅の働きをみせた。しかし、その小栗をも飲み込む時代の大きなうねりが押し寄せていた―。自らの信念と使命に殉じ、日本近代化の礎を築いた幕臣の姿を鮮烈に描く歴史ドキュメント小説。
著者等紹介
佐藤雅美[サトウマサヨシ]
1941年兵庫県生まれ。早大法学部卒。85年『大君の通貨』で新田次郎文学賞、94年『恵比寿屋喜兵衛手控え』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
79
ネジをいっつも持って見てる人です。今のNHK大河ドラマの。 地味です。幕府唯一の切れ者、しかも悲劇の人なのに。 経済畑で格闘。横須賀のドックは彼の遺産。 淡々と描かれてます。 作者、アンチ慶喜らしく、彼の悪口書くときは筆が熱くなるw2021/06/24
糜竺(びじく)
41
私の好きな直木賞作家の佐藤雅美氏の歴史小説です。著者らしくまさに骨太で重厚感ある作品でした。主人公は、幕末の江戸幕府を支えた小栗上野介忠順です。読んでいて、主人公は芯がしっかりしている人物である事が伝わってきます。自分としては、小栗上野介は最後まで薩長に徹底抗戦を主張し、勝海舟の政敵というイメージを抱いていました。確かにその通りでしたが、しかし、彼自身がアメリカに行っていたり、外交交渉を何度もこなし、また、幕府の金庫番として大いに能力を発揮していたりと、色んな側面がある事を知る事が出来て面白かったです。2016/09/10
り こ む ん
33
勘定方と言えばで、誰もが顔を浮かべたとされる。今でいえば官僚。小栗忠順。適任だとされながら、上司に歯に衣着せぬ発言にて、何度、罷免されたことか?彼をうまく使いこなせていたならば…と、思わずにはいられない。強気で先見をもつ人物だっただけに潰されるのは、世の習いなんだろうか?にしても…慶喜と春獄の人物像がケチョンケチョンだったのにはビックリした。2013/05/29
Willie the Wildcat
32
義とスジを重んじて奮闘。結果ではなく、過程であり、腹のくくり方。胆力。但し、国家を語り、身体を張る幕僚・閣僚と、方向性を指し示すリーダーの不在が大勢を決することに・・・。。現代にも続く政治・経済での国家レベルでの交渉力の弱さ。稀代の政治家・事業家という個人から組織レベルへの交渉力向上には何が必要なのだろうと、ふと考えてしまう。蛇足だが、頭でわかっていても、当時の欧米のやりたい放題を改めて文字で読むと不快感・・・。まだまだ精神修養が足りないなぁ。(笑)2014/05/29
ポメ子
9
『万波を翔る』で、小栗忠順の事が出ていたので、積読本のこの本を読んだ。 これは、小説というより、評伝というものだろうか?よく調べているのは、分かったが、私には難しくて読みづらかった。それでも小栗忠順のことは、ぼやっと分かった気はする。昔、時々訪れた界隈にある横浜紅葉坂の図書館が神奈川奉行所跡とか、江戸検で訪れたお茶の水の明治大学近くに小栗の屋敷があったとか、ゆかりの地名が出てきて想像するのが楽しめた。2020/03/11