内容説明
クラスメイトの杉山が死に、僕の名前「FUCHITA」を彫り込んだ金属片と手紙を遺していった。手紙には「友人の姫野に、山岸小夜子という女と関わらないよう伝えてほしい」という伝言が。しかし、山岸もまた死んでいるらしい。不可解な事件に否応なく巻き込まれていく僕は、ある時期から自分の記憶がひどく曖昧なことに気づく。そして今度は、僕の目前で殺人が―。森ミステリィの異領域を拓く、冷たさと鋭さに満ちた少年小説。
著者等紹介
森博嗣[モリヒロシ]
1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学の工学部助教授の傍ら、96年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tetchy
114
ノンシリーズの学園ミステリ。高校生の淵田悟を語り手に彼の親友姫野と2人でクラスメイトの杉山友也が自殺した謎に迫るというもの。ただ他の森作品同様、探偵役は相変わらず無気力だ。自ら謎解きに積極的に関わっていくわけではなく、淵野は姫野の好奇心に引っ張られる形で友人の死に関わっていく。この何とも奇妙なタイトルの意味は最後の一行で判明する。しかしそれでも何とも素っ気ないタイトルである。実はGシリーズで復帰した西之園萌絵がいないミステリ、即ち“萌絵無い”こそが隠されたタイトルの意味だった…訳ではないよなぁ、さすがに。2023/09/05
miri
62
森博嗣の魅力は乾いた拡散していくような文章と理系の蘊蓄の融合だと思っていますが、理系要素が弱いと迷走しがち。本作はミステリーとも、少年小説とも言い難い 。着地点が定まっていないので、迷走と言うより他ない。お勧めはし難いので、この著者の作品を読むなら初期の作品。理系ミステリーの分野を開拓したデビュー作、『すべてがFになる』を読むべし。初期作品がいいです。2021/01/10
coco夏ko10角
30
ノンシリーズ、青春ミステリのつもりで読んだけど著者によるとサスペンス。途中の展開で乙一のある作品を思い出した。この『もえない』を中高生の頃の自分が読んでたら相当に衝撃だったかも。タイトルの意味が明らかになる場面がいい。2015/01/01
cozicozy
24
何故なのか?すりガラス越しに、モノを感じるような感覚をまといながら、読み進めることになりました。心の感じる場所に、スーっと染み込んでこないと言うのでしょうか?自分が高校生の年齢から遥か遠い大人であるからでしょうか?自分とは無縁の死が、物語が進むにつれて、過去の自分との対峙となるなんて、誰が想像するでしょうか?予想もしない展開の物語に出会った感じです。夢は、ただの夢ではなく、何かを伝えるものなのでしょう?森博嗣作品に、触れると不思議な感覚に囚われるのです。私の脳は、理数系には出来ていないからなのでしょうか?2013/07/25
東京湾
23
森ミステリとしては異色の部類に入るであろう作品。青春ミステリという形ではあるがそれとしても異色だろう。何にせよ面白い。今までとは違う森ミステリを存分に楽しむことができた。自殺した同級生の遺品の栞、そこに刻まれた主人公のイニシャル。その意味は何か?そもそも何故自殺を図ったのか?そこから繋がりはじめる謎の連鎖、やがて主人公の記憶のベールは剥がれ、謎の真相も微かに現れる。とまあミステリとしても様々な曲折があり面白いが、本作は高校生特有の不安定な感情描写等にも秀でており、青春小説としても良作だ。題名の意味も良い。2016/11/16