内容説明
昭和8年、巣鴨の水道屋の次男坊・曠吉は、家業を手伝いながら、第1回直木賞作家・川口松太郎のような小説家になることを夢見ていた。しかし頭の中に浮かぶのは、美しい女との××のことばかり。曠吉は、様々な女と出会い、彼女たちに魅かれ、人生の愉しさ、儚さを知る。歳月を重ねながら、少年は一歩ずつ大人への階段を上っていく。都々逸や小唄を小気味よく挿みながら、男と女の「情」を描いた、胸にしみいる人情小説の白眉。
著者等紹介
久世光彦[クゼテルヒコ]
1935年、東京生まれ。東京大学文学部美学科卒。TBSで「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」など多くの人気ドラマを手がける。その後、文筆業にも手を染め、独特の美学をたたえた秀作を発表。作品に、『一九三四年冬―乱歩』(山本周五郎賞)、『聖なる春』(芸術選奨文部大臣賞)、『蝶とヒットラー』(Bunkamuraドゥマゴ文学賞)、『蕭々館日録』(泉鏡花文学賞)など多数ある。2006年3月、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ウチ●
1
確かにノスタルジーと言えばそれまで・・・。しかし、現代とは違う、ましてや江戸とも違う。大正から昭和初期にかけて流れたゆるりとした時間の中で、人々(特に年上の女性にモテまくる。)の心のひだに入り込み成長していく主人公「曠吉」の物語。川口松太郎に憧れた久世光彦さんの絶筆です。畑中純「まんだら屋の良太」を思い浮かべました。表紙の岩田専太郎画伯の美人画が良いですね~。2012/08/30
ミメイ
1
☆4久世さんが好きだった川口松太郎へのオマージュとでもいうような作品。でも紛うことなく久世ワールド。
しまねこ
0
なんかおおらかな時代というか人たち。涙子さんの名前が淫靡。2012/07/05
Peter-John
0
恋といえば恋なんだろうけど、どっちかといえば勃起しまくる曠吉の話が中心。そこをいやらしくなく描くところが作者の腕ですねえ。「昭和人情馬鹿物語」という副題は川口松太郎の小説の題名で、この作品はそのオマージュ。で、曠吉の相手は年上ばかりで、なかでもお涼さんは都々逸の名手にしてアームチェア・ディテクティブ役の40前。昭和のはじめの40前というとどんなだっただろう?2019/06/07