内容説明
寛政年間のこと、出世の道を歩んでいたはずの数馬は、「山流し」と蔑称される甲府への転出を命じられた。理不尽な左遷に憤る数馬が、家族とともに向かった甲府で見たものは、城下の賑わいとは裏腹に、風紀の乱れた、荒んだ武士たちの姿だった。新参いじめを謎の女に救われた数馬は、不思議な盗賊騒ぎに巻き込まれていく…。江戸では見えなかったこと、逆境の中でこそ知り得たものとは、何だったのか?気鋭が放つ時代長編。
著者等紹介
諸田玲子[モロタレイコ]
静岡市生まれ。上智大学文学部英文科卒業。外資系企業勤務を経て、翻訳・作家活動に入る。1996年、『眩惑』でデビュー。2003年、『其の一日』で第24回吉川英治文学新人賞を受賞。07年、『奸婦にあらず』で第26回新田次郎文学賞受賞。平安から江戸以降まで、幅広い題材に取り組み、新しい感覚の時代小説の書き手として注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶんこ
44
何度も読み止めようと思いつつ、読メさんのアドバイスを思い出し、数日かけて読みました。 左遷された男の人にとって、多紀さんや蕗さん、都万さんも含めて女性陣の役割は大きいと痛感しました。 住めば都というのは、結果が良かったから言える事でしょう。 何処に住むかではなく、周りにどんな人が居るかだと思いました。 武陵さんが素敵でした。 一つの事に打ち込んで、毎日を好奇心でいっぱいにしてるのが羨ましい。 数馬さんが主役なのですが、他の方々にばかり目がいってしまいました。 2015/10/29
はつばあば
41
山流し?江戸はそんなに都会かえ。京の方が都ぞえ・・なんてね(^^♪。信州の田舎‥確かに爺さんの実家に初めて行った時は山超え谷超え・・そりゃ細い道の端は崖っぷち片方は山。向かいから車が来た時は・・そりゃ恐ろしいものでした。江戸時代にそんな山奥へ左遷の憂き目に遭ったら・・そりゃ人生破滅の心境で自暴自棄にもなりますわなぁ。数馬が初めてであった武陵は武士や村の者達に勉強を教えてきた。「住めば都」爺さんも山奥から出てきて京都に住まう。嫁がよくできた女ですもの('◇')ゞ。娘達は京を出てそれぞれの地に。数馬も善き哉2022/05/26
優希
39
ちょっと読むのに辛さもありましたが、全体としては面白かったです。出世の道を歩んでいた数馬が甲府へと山流しされてしまいます。この鎖線からして理不尽だと思うのですが、家族と共に行った甲府で待っていたのは風紀が乱れ、荒んだ武士たちというのが痛いですね。まさに苛めまっしぐらの道です。謎の女がいなければ救われなかったでしょう。しかし、それを機に盗賊騒ぎに巻き込まれるのだから恐ろしいのですが。江戸にいては気づかないことに逆境の中に投げられたからこそ見えたのだと思います。山流しも悪いことだけではなかったようですね。2014/09/15
智哉
13
タイトルが秀逸。甲府の長閑な村と長屋の面々に囲まれて、少しずつ人としての尊厳を取り戻していく。学問に釣りに乗馬に、気の向くままに時間を費やす生活が羨ましい。不穏な空気がじわじわと増幅していく展開は、ミステリー小説を読んでいるよう。2014/11/10
オレンジ。
6
数か月前に読んだが登録忘れしていたので記録の為に。今でいうところの左遷の話。数馬は同僚の奸計により、「山流し」と言われる甲府勝手小普請へ転出を命じられる。甲府は城下の繁栄とは裏腹に武士の風紀は乱れ、数馬も騒ぎに巻き込まれる。逆境の生き方を問う時代長編。(KADOKAWAのあらすじを少々拝借)2015/01/04