内容説明
とある港町、運河のほとりの古アパート「霧笛荘」。法外に安い家賃、半地下の湿った部屋。わけ知り顔の管理人の老婆が、訪れる者を迎えてくれる。誰もがはじめは不幸に追い立てられ、行き場を失って霧笛荘までたどりつく。しかし、霧笛荘での暮らしの中で、住人たちはそれぞれに人生の真実に気付きはじめる―。本当の幸せへの鍵が、ここにある。比類ない優しさに満たち、心を溶かす7つの物語。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京都生まれ。95年『地下鉄に乗って』で第16回吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で第117回直木賞、2000年『壬生義士伝』で第13回柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で第1回中央公論文芸賞と第10回司馬遼太郎賞、08年『中原の虹』で第42回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
158
★★★☆☆17114 霧笛荘各部屋の訳あり人物にまつわる話で構成された作品。それぞれの住人が何かしらの関係で繋がっていたりするところがミソ。話それぞれに多彩な雰囲気があって、浅田さんの巨大な引き出しから色々と引っ張り出してきたのだろうなぁと感じます。個人的には第4話瑠璃色の部屋が良かったですね。微妙に目頭が熱くなる話でして、姉弟が互ひを思ふ気持ちに感動すること間違ひなしです。ここで世間話を。柳沢慎吾さんが言ふ「あばよ〜!」の語源由来は諸説あるようですが「按配よう〜!」が有力らしひですね。(了)2017/11/22
masa@レビューお休み中
135
おとぎ話のような愛らしさはない。むしろ、現実的で残酷な人間模様が描かれている。それにも関わらず、読み進めてしまうのはどこか同じ匂いを感じるからなのだろう。港町にある霧笛荘には、どこからともなく人々が寄ってくる。名前をなくした女、死に切れない女、バンドマンの少年、戦争を生き残った男…。お金がない、身寄りがない、行く先がない。一見すると憐れに思えるのだが、家主である老婆はみんな幸せだったという。人生とは何か、幸せとは何かを教えてくれる。切ないけれど、温かいお話なんです。2017/02/08
kinupon
100
久しぶりの浅田本です。最初はちょっと違和感がありましたが、読み進めていく内に、浅田ワールドに引き込まれました。この切なさたまらないですね。2017/07/20
あすなろ
99
この霧笛荘の他に行き場はない。ここは浮世のどん詰まり。でも地獄じゃない。そんな霧笛荘の物語。その姿は、長い労苦の屈辱と忍耐の果てに醜く変容した人間のよう。語り部浅田氏の物語の世界に没頭した。朝日の当たる部屋・瑠璃色の部屋では、終電間近の電車の中で落涙しそうに。仕事で疲れ切った心にはてき面に効いた物語達であった。2016/02/26
Atsushi
98
『不幸の分だけの幸せは、ちゃんとあるものよ。どっちかが先に片寄っているだけさ』。運河のほとりの古アパート「霧笛荘」に住む人たちの人生模様を描いた連作短編集。どの住人も社会の底辺で不本意な人生を送っているが、悲壮感はなく明るささえ感じてしまう。それは、彼らが厳しく苦しい環境の中にも他人を思いやる優しさを持ち合わせているからだ。再読したい一冊。2018/10/11
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