内容説明
親友を突然うしなった男の子、リストラに晒され、息子に侮蔑されながらも日常に踏みとどまり続ける父、不登校を続ける少年が出会った廃品回収車の老人、女手一つで仕事を抱えながら育てた息子を襲った思いがけない病―苦しみから立ちあがり、もういちど人生を歩きだす人々の姿を鮮やかに切り取った短篇集。たくさん泣いたあとは、あなたの心にも、明日を生きるちいさな勇気が戻っているはず。
著者等紹介
石田衣良[イシダイラ]
1960年東京都生まれ。成蹊大学経済学部卒。広告制作会社勤務後、コピーライターとして活躍する。97年『池袋ウエストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞。同作品はドラマ化され、社会現象となるほどの人気を博した。2003年『4TEEN』で第129回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソルティ
381
ストレートに良い話で泣ける!な短編集。大切な人が亡くなる、何かを失う、でもそこからだんだんとだったり、奇蹟みたいな事が起こって再生していく、という話を集めている。解説にもあったが、特にひねりもなくただいい話、なのに退屈じゃない。石田衣良さんは色んなジャンルを書くなぁ。「「(略)雄吾が言ってたバカらしさな、あれは大人だってみんな同じように思ってるんだ。でも、そのバカらしさに正面から反対するのも、バカらしい。みんな、どこかで無理して、まわりに調子をあわせてるんだぞ。兄ちゃんもちょっとは大人のふりをしてみな」」2021/08/18
❁かな❁
197
とっても良かったです(இдஇ; )いろんな人々の再生の物語*絶望、喪失から立ち上がり進もうとしていく姿に涙が溢れました。石田さんは池田小学校の事件を知り胸を痛め何かで救い出すことはできないかと「約束」を書かれたそうです。どのお話も涙しましたが「約束」で一番泣いてしまいました。石田さんは最初の一行を書いた瞬間に涙していたのはあとにも先にもこの「約束」だけとのこと。「夕日へ続く道」「ハートストーン」も良かったです!心が温まり前に進もうと思える素晴らしい作品★石田さんの優しさ、想いをとても感じました*オススメ♡2015/10/27
風眠
177
どんなにつらい境遇にあっても、人が人を想う、思いやりにあふれた物語たち。表題作の『約束』は、目の前で友達が殺されるという、衝撃的な体験から立ち直ろうとする小学生の姿が痛々しくも健気な作品。ラストの校門から家へ帰るところの描写が、とても感動的だ。そのほか『天国のベル』も好きな作品だった。それぞれの物語の始まりは重くてつらいけれど、最終的には光が射すような、ほんのりとしたぬくもりを感じさせてくれる短篇集。2013/08/09
にいにい
173
初石田衣良さん。読友さんのお薦め。7篇の短編集でどの話も回復の物語。薄い繊細な文章と落としどころを見据えたプロットは、見事。でも、少し短すぎたかな?少年や少女達の苦しみが、ちょっとした1事象でさっと好転し過ぎ。また、超自然現象を多用し過ぎ。敏感な心の隅をテーマに選んだ所をもっとゆっくりまとめてほしいという思いが残った。何故だろう、他の類似作品を読みすぎたから厳しすぎるのかな?もう少し長めの作品を読んでみたい作家さんだった。「ハートストーン」と「天国のベル」がいい。ちょっと涙腺を刺激するにはうってつけ。2015/06/22
新地学@児童書病発動中
164
泣ける短編集。安易なお涙頂戴の物語ではなく、犯罪や病気、死といった厳しい状況を乗り越えていく人達への応援歌となっている。特に作者が困難の中にいる人の心に寄り添おうとしている所が良かった。私の一番の好みは最後の「ハートストン」だ。小児癌という残酷な運命に翻弄される親子を描いており、読んでいてつらい気持ちになった。物語の中で救いが示されるわけではないが、過酷な状況にありながらも、人間としての優しさを失わない登場人物たちに心を揺さぶれる。最後の三行では涙がこぼれた。2015/08/31