出版社内容情報
安本 末子[ヤスモト スエコ]
著・文・その他
内容説明
昭和28年、九州の炭坑町。幼くして両親を亡くし、長兄の僅かな稼ぎで身を寄せ合って暮らす4人の兄妹。やがて臨時雇いの長兄が解雇され、一家は離散、次兄(にあんちゃん)と10歳の末子は、知人宅の居候の身になった。さらに襲ってくる苦境に次ぐ苦境。しかし、末子は希望を捨てず、真っ直ぐに生きていく。貧困の悲しみ、兄妹の愛と絆、教室の友情―末子を取り巻く現実をありのままに綴り、日本中の涙を誘った少女日記。
目次
第1部 お父さんが死んで…(兄さん、ねえさん;「なんでこんなにお金が…」;べんとう;大雨の日 ほか)
第2部 兄妹四人…(友だちのたんじょう日;兄さんからの手紙;五年生になる;人間のうんめい ほか)
著者等紹介
安本末子[ヤスモトスエコ]
1943年佐賀県生まれ。3歳で母を亡くし、52年、9歳で炭坑夫の父と死別する。残された子どもたち、長兄、姉、次兄、末子ら4人の生活となり、日記を付け始める。57年、その日記に心打たれた長兄が経緯を添えて光文社に送る。58年、中学3年生のときにカッパブックス『にあんちゃん』が刊行され、大ベストセラーに。早稲田大学文学部を卒業。広告代理店勤務を経て結婚。現在は、茨城県に住む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アン・シャーリーこと寺
79
今村昌平が映画化した事と、昭和のベストセラーだった事は豆知識で知っていた『にあんちゃん』。角川が文庫にしていたとは知らず、気が向いて読んでみた。戦後間もない佐賀の10歳の少女の日記なのだが、切なくて参った。両親に先立たれ、兄妹4人で暮らす一家。在日である為に炭鉱で正社員にもして貰えぬ長兄が家長である。日記を書くのは末っ子の末子ちゃん。どんどん悲惨になる家庭環境を、悲観しながらも時に透徹した目で眺める。感謝しつつも見えてくる大人達の本心。末子ちゃんにとっては学校が一番楽しい場所。考えさせられる名日記である。2019/01/28
クラミ♬
34
清々しい貧しさってあるんですね…。家族がそろわない寂しい気持ちはヒシヒシ伝わるが、素直で賢くプライドもあるので悲惨さがあまり感じられない。NHK土曜ドラマ「天使にリクエスト」にこの本が登場したので読んでみました。2020/10/06
あつこんぐ
30
図書館本。これはお金を出して、手元に置き何度も読み返すべき本です。そして、たくさんの人に読んでほしいです。うちの母も炭坑育ちなので「昔は貧乏で嫌だった」とよく言います。これだけ酷い目にあっていても汚い言葉を使わず、兄弟姉妹をおもいやる姿に頭が下がります。今の時代ならすぐ「殺す」とか「死ね」とか物騒な言葉が飛び交いそうですが…。読書感想文の指定図書にして1人でも多く読んでほしいものです。 2018/01/14
藤井宏
13
佐賀県にちなんだ本をさがしていて本書に出会う。ベストセラーとなり、映画にもなった本とは知らず。著者の小学生のときの日記。炭鉱の町で暮らしていた親子。母と父を亡くして4人のきょうだいで暮らしていかなければならなかった。長兄のかせぎが暮らしを支えるも、出自が影響し、臨時雇いとしてしか雇用されなかった。住むところを他人の家にお世話になったり十分な食べ物や本も買えない恵まれない境遇の中、長兄が末子に作文の書き方を教えていたという手紙には心を打つものがありました。2024/01/08
sashi_mono
13
九州の100冊シリーズ② 「にあんちゃん」は、昭和二十年代末、小学三年生の安本末子さんが、両親が亡くなってから一年半あまりの生活を綴った日記です。等身大の日々をいっぱいに受けとめる、少女の心の動きが鮮やかに記されています。学校へ行くこと、友達と遊ぶこと、家族と暮らすこと、いまでは当たり前のように感じられる日常が、それを許されない末子さんにとって、どれほど喜ばしく心はずむ出来事だったのか、その様子がありありと迫ってきます。一喜一憂する少女の軌跡が、鮮やかに読み手の胸に吹き込んでくることでしょう。2018/05/09