出版社内容情報
大人たちの世界を瑞々しい筆致で綴った、ハートウォーミング・ストーリー。厳格な父の教育に嫌気がさし、成人を機に家を飛び出していた柏原野々。その父も亡くなり、四十九日の法要を迎えようとしていたころ、生前の父と関係があったという女性から連絡が入り……。
森 絵都[モリ エト]
著・文・その他
内容説明
柏原野々は天然石を売る店で働く25歳の独身女性。厳格な父の教育に嫌気がさし、成人を機に家を飛び出していた。その父も亡くなり、四十九日の法要を迎えようとしていたころ、生前の父と関係があったという女性から連絡が入る。世間一般にはありふれたエピソードかもしれないが、柏原家にとっては驚天動地の一大事。真偽を探るため、野々は父の足跡を辿るのだが…。森絵都が大人たちの世界を初めて描いた、心温まる長編小説。
著者等紹介
森絵都[モリエト]
1968年東京都生まれ。91年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。同作品で椋鳩十児童文学賞受賞。『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、『アーモンド入りチョコレートのワルツ』で路傍の石文学賞、『つきのふね』で野間児童文芸賞、『カラフル』で産経児童出版文化賞、『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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エセ文系本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
173
「いつかパラソルの下で」という書名から感じるなんとも言えない突き抜けた清々しさを感じる物語。冒頭と結末になんら変化のない普通の日常が描かれた物語。登場人物の心の内に開かれた未来から感じる深さと爽やかさの絶妙な競演を楽しむ物語。森絵都さんが描く大人な物語は、人の心の機微に触れるそんな素晴らしい作品でした。 2020/11/27
Atsushi
143
夏季休暇を取得して実家に帰省。夕方散歩をしていると古くから知っている婆様とすれ違う。「あら」と自分の名前をちゃんづけで呼んでくれた。もうすぐ還暦を迎えようとするのに少し照れくさい。兄妹が亡き父の故郷を訪ね、父と自らを見つめ直す物語。佐渡の紺碧の海が目に浮かぶ。2018/08/13
ユザキ部長
138
亡くなったお父さんは異様なまでに堅物で無口で、自分のコンプレックスは全てお父さんのせいにしてた。そんなお父さんの半生と暗い血を追ってたら大切な自分自身の日常に気がついた。亡くなったお父さんには申し訳ないけど、とりあえず、私達家族は今生を楽しむね。しばらくしたら右手にパラソル、左手にビールを持って、お父さんの墓石に行くよ。2016/06/13
優愛
137
「愛しても、愛しても、私自身はこの世界から愛されていないような、そんな気が心のどこかでいつもしていた。受け入れても、受け入れても、私自身は受け入れられていない気がしていた」読み終えた今、心から思う。大人になっていくその経緯を、私は細部まで愛していきたい。嫌いな自分を認めるその行為。自分を好きになるよりはずっとずっと困難でだからこそ価値のある行為を、生きている私達は肯定して生きていかなければいけないんだと本書が教えてくれたから。青すぎる海を前に、命の有り難みをそっと日傘の下に包み込み私は今日も生きている。2015/03/15
kishikan
118
今まで読んだ森絵都さんの本とは異なり、生活観のある話。森さん特有のほんわかとした文章で綴られる内容は、でも結構重いものがあって、一応ハッピーエンドなんだけど妙に尾を引く。厳格で潔癖症の父親、そしてそれがトラウマになっている主人公。その父の死後、家族は隠された負の一面を知ることに・・・。家族だからといってそれぞれの真の姿がわかるわけではない。また、それにとらわれていたら、毎日毎日が地獄のように思えてくる。と、そんなことは書いていないけど、やっぱり皆が分かり合えて、海岸のパラソルの下で語り合いたいものだね。2011/08/28