内容説明
仕事も名前も年齢も、なんにも持っていない自分に会いにゆこう。ロシアでは国境の巨人職員に怒鳴られながら激しい尿意に耐え、マレーシアでは釣りに行くのに12時間以上も地元の友達と飲みながら待たされ、キューバでは命そのもののように人々の体にしみついた音楽とリズムに驚かされる。明日にでも旅に出たくなるエピソード満載!五感と思考をフル活動させ、世界中を歩き回る旅を、臨場感たっぷりに描く傑作エッセイ集。
目次
Be Happy―モロッコ
The Border―ロシア
ロシアの幽霊―ロシア
非リゾート―ギリシャ
コノミ―オーストラリア
祈り―スリランカ
サイミン―ハワイ
A DEAD DOG IS…―パリ
旅と年齢―ラオス
ほとほといやになるけれど―イタリア〔ほか〕
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。90年「幸福な遊戯」で「海燕」新人文学賞を受賞しデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年路傍の石文学賞、03年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞。06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
534
角田さんの旅本は、いつだって読み手の過去旅を回想させてくれる。今回心に残ったのは、旅先で出会った人と住所を交換して、忘れたころに写真が届いたというくだり。今じゃLINEやiMessageで瞬時に画像は交換できるしね。以前読んだときには未訪だった台湾に関しては、角田さんは「この国の将来は大丈夫」と断言していらっしゃる。最近ではきな臭いニュースを耳にする御地、以来二度訪問したわたしもそう信じたい。2021/07/24
ヴェネツィア
469
なかなかに上質の旅エッセイ。角田光代さんの旅のスタイルと個性が遺憾なく発揮されている。それにしても、こんなに度々旅行に行けるお金と時間とを捻出できる生活の余裕は、実に羨ましい限り。とんでもない辺境には足を延ばしてはいないけれど(それが彼女の旅の基本スタイルでもあるのだろう)、それでもモロッコのトドラ渓谷やモンゴルの大平原に行っている。そんな彼女の旅の原点はタイであるらしい。基本的にはアジア旅派だ。この紀行を読んで、私が一番行きたくなったのはキューバ。キューバは、今もこんな風だろうか。2018/04/13
ミカママ
253
大好きな角田さんの旅エッセイ、私自身も旅から帰ったばかり、角田さんの訪れた国も私自身の経験といくつかかぶってる、とあれば面白くないはずがない。まずは彼女の行動力と、旅を楽しむわよ!いう気迫に脱帽。そういや私も若い頃は無茶やったっけ。角田さんのベトナムでの体験には、思わずしんみり。ベトナムも行ってみたいなぁ、あー、イタリアも!2016/07/17
ykmmr (^_^)
175
『ベストエッセイ』なんかに投稿がある角田さんは、『エッセイ』も得意と聞くし、自分も思う。彼女の描く物語は、社会に切り込んでいるモノも多く、たまに微妙な『重層感』があるが、このエッセイは『旅日記』だけあり、爽やかに、彼女が一緒に『旅』に出た人、または『旅先』で知り合った人、見た風景を素直に描いている。ただ、やはり『物書き』が描く文章。言うまでもなく、『文学的』。売れっ子だし、文学賞の審査員なんかもやられているだろうから、忙しそうに見えるけど、2022/12/21
ゆいまある
111
旅行中に飛行機の中で読んだ。22カ国の旅のエッセイ。余計な先入観を持たず、社会主義国にも積極的に行くし、韓国に行けば独立記念館を見に行く。日本人が何をしたか知っておかなきゃいけないから、と。基本独り旅で、どこに行っても不安で緊張していているから尚、人の親切が染みる。謙虚な人である。不器用で素直で、綺麗な景色が見えただけで泣いちゃうような人である。丁寧な描写に、読んでるこっちも釣られて泣いちゃうんである。多分モルディブとか行ったら落ち着かなくなりそうな人である。この本を旅先で読めて良かった。2022/06/30