内容説明
子供を妊娠し浮かれているサエコの家に、夫の姉・実夏子が突然訪れる。長い間消息不明だったという実夏子は、そのまま勝手に住み着いてしまった。真夜中に化粧をしたり、冷蔵庫のハムを丸ごと食べたり、と不審な行動を繰り返す実夏子。何も言わない夫に苛つき、サエコの心はかき乱されていく…。出産を目前に控えた女性の心の揺れを描いた表題作ほか、一篇を収録。瑞々しい筆致で描き出された、心に染みる極上中篇集。
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。90年「幸福な遊戯」で「海燕」新人文学賞を受賞しデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年路傍の石文学賞を受賞。2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞を受賞
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感想・レビュー
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Ikutan
66
二つの中編。突然やって来た夫の姉に、心をかき乱される妊婦を描いた『ピンク・バス』。自分捜しをこじらせてきた妊婦のサエコの過去にはあまり共感はできず、夫、タクジもなんだかねぇ。そこにジワジワ侵食していく姉の得たいの知れない行動や言葉が不気味。ファンタジーな結末ながら読後感はゾワゾワ。20年間で10人の死に顔を見たという主人公の諦念や人間関係を描いた『昨夜はたくさん夢を見た』。ほんの少し前の学生たちの生活ですね。今の若い人たちには共感できないだろうなぁと思いつつも、角田さんの人物描写の上手さに感心し読了。2016/04/12
NADIA
54
初めての妊娠が判明したタイミングで、何年も行方不明で音信不通だった夫の姉が転がり込んできた。以前読んだ、近藤史恵「はぶらし」を思い出したが、その変わり者っぷりは少々違っていて、こちらは「イラっとくる」ではなく「不安になる」方向。結局彼女は何者だったんだ!?と思ったが、ヒロインのサエコもいろんな人格を演じながら生きてきたという不気味な人物。特に大学生の時にホームレスを彼氏とし、一年くらい一緒にホームレス生活をして、ある日違和感を感じて元の生活に戻るという離れ業をやってのけたエピソードは強烈だった。2018/12/05
さら
41
妊娠による不安定さなのか、それとも彼女が元々持っている性格なのか、共感出来る部分と理解出来ない部分が共存する不思議な世界でした。日常なのだけれど非日常でもあり、そのハラハラするような不安定さがクセになるというか、ねっとりとした湿った空気を感じさせる本でした。2017/03/26
へいっち(ت)♪
36
可愛らしいタイトルだけどブラックなファンタジーといった話。サエコの妊娠がわかるのと同時に義姉がやって来る。帰る気配のない義姉の不気味な行動。いつまで居るのか。そしてピンクのバスが迎えに来て・・・。奥が深そうだか私には理解が難しい作品でした。2015/03/20
巨峰
36
みんな、いろいろ抱えていたり、やんでいたり。大きくOUTしたり、それでもINできたり。まだ若いから戻ってこれるのか。角田さんの小説は、いい加減でいて、重い。2014/08/24