内容説明
140首余りの珠玉の和歌を擁する、王朝女流日記文学の傑作。今は亡き恋人への追慕に明け暮れる和泉式部へ、弟の帥宮敦道親王から便りが届き、新たな恋が始まった。和泉式部が宮邸に迎えられ、宮の正妻が宮邸を出るまでの10か月を、技巧を駆使した贈答歌とともに綴った、物語的な側面をも兼ね備えた作品。明解な注と美しい現代語訳により、『和泉式部日記』の世界が目の当たりに立ち上がる。参考資料として、『和泉式部集』から、敦道親王死去後の和泉式部の悲痛な心情を歌った「帥宮挽歌群」全122首を収める。
目次
夢よりもはかなき世の中
同じ枝の郭公
突然の来訪
はじめて物を思ふあした
五月雨のあやめ
あけざりし真木の戸口
待ち取る岸
窓打つ雨
月夜の人なき廊
末の松山、波高し〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆずきゃらめる*平安時代とお花♪
39
[日本の古典を読む第4回]のイベントより♪日記文学自体読んだことがなかった、まず口語訳から。和泉式部とは恋 多き女、彰子に宮仕えしていたぐらいしか知らない。これは〈日記〉というより〈物語〉に近い。和泉式部独特の認識のためこうなったのだろうか。2017/04/29
tsu55
27
新緑の鮮やかな旧暦4月から翌年正月までの10か月間、帥宮との出会いから、北の方退去までの恋の冒険物語。移ろう季節に合わせ、不安と戸惑いに揺れ動きながらも恋の道を歩む男女の姿が知的でオシャレな歌の贈答を中心に描かれている。 この時代は、贈答歌を巧みに詠むことがモテる女の条件だったんだな。2022/03/06
しゅてふぁん
26
この作品は日記か物語か、との議論があったのも頷ける。内容は身分違いの恋物語としか思えない( *´艸`)これが実際の出来事かと思うと、もう何と言うか…胸がいっぱいになる。『帥宮挽歌群』全122首が収録されているということで購入したけれど、『今ひとたびの、和泉式部』を読むにあたっての予習に丁度よかった。あー、やっぱり面白い!帥宮挽歌群はもちろん、贈答歌も素敵。和歌で会話するなんて、雅だなぁ(*´ω`*)でも、それって同じだけの知識がないと無理だよね(^^;2017/04/14
LUNE MER
23
夜分に男が訪れてくれているのに女側は(来ないもんだと思っているので)みんな寝入ってしまっていて来訪に気づかずに翌朝の文で来てたことに気づくとか、別の女に歌を贈りたいので代筆して欲しいと男に頼まれて渋々と二つ返事で引き受ける手練れの和泉式部とか面白い。源氏物語等の物語の中ではご都合主義でサクサク展開されてしまう流れも実際はこんなことあるよね、と気づく。女性歌人の中では和泉式部がいちばん好きかも?というところなので、和泉式部集や後拾遺和歌集で純粋に彼女の残した歌を堪能しよう。2022/04/07
花実
15
求愛を受けた敦道親王との和歌の贈答を中心に据え、恋の初めから、請われて宮廷に出仕するまでが綴られている。一気に進む恋愛ではないので、じれったいことこの上ないのだが、そのおかげで、その間の和歌のやりとりの繊細な呼吸、巧みさや豊かさを、季節の移ろいとともに堪能することができる。敦道親王の心を捉えて離さなかったのは、ひとえに和泉式部の和歌の才能のおかげという気がします。心が通い合っても、不安や孤独やむなしさが漂う。それも魅力の要素です。2013/09/02
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