内容説明
名著『日本百名山』を記した作家・登山家の深田久弥には、山を歩き回らずにはいられない理由があった―。童話作家・北畠八穂との出会いを機に、文学活動を開始した深田と八穂との創作の秘密、愛憎、作家としての挫折、小林秀雄、井伏鱒二ら文士たちとの交流など…。虚像と実像、その知られざる生涯を丹念に描き、「山」の裏側にある日々の暮らしの秘密に迫る。
目次
第1章 茅ヶ岳に死す
第2章 二人三脚
第3章 運命の再会
第4章 追はるる人
第5章 ヒマラヤの道標
第6章 百名山の人
著者等紹介
田沢拓也[タザワタクヤ]
1952年、青森県生まれ。早稲田大学法学部・第一文学部卒業。出版社勤務を経て、ノンフィクション作家。『ムスリム・ニッポン』(小学館)で第四回21世紀国際ノンフィクション大賞優秀賞、『空と山のあいだ』(角川文庫)で第八回開高健賞受賞
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感想・レビュー
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goro@the_booby
60
登ろうとするお山の分しか読んでいない「百名山」ですが深田久弥はどんな人だったのかと関心があり手に取った本。人に歴史ありですが、読後はこの表紙の写真がなんだか納得。宿痾を負った前妻との関係、雨飾山の逸話でも有名な不倫相手の初恋の人との家庭。お金にも執着せず山岳関連の高価な書籍に変わり、人生の関心はお山、お山。エライもんですが家族は大変だったろうな。いつかは茅ヶ岳へも登りたいと思います。2022/01/16
まきまき
4
日本の山を訪ね歩き、その風景を抒情的なエッセイに遺し、百名山を選んだ作家、深田久弥。きっと、純朴な山男で、自然を愛し文学を愛する清貧の士だったんだろうなあ・・・とか思いながら読んだら、アレッ、いや、それも間違いじゃないんだけど、なんか意外と、人間的にダメな感じの人だったような・・・? まあ、なんて言うか、無邪気で飄々とした人だったんだろうね。それが受け取る人によって、許せるか許せないかで。たくさんの人から慕われていたことも事実のようだし。まあ、意外な人生で面白かったです☆「百名山」ちゃんと読んでみよー。2016/09/21
sasha
3
本書のタイトル通り「百名山の人」としての認識しかなかったんだよな。戦前は恋愛小説を発表していたとか、その作品が実は前妻の筆になるものをリライトしていただけなんて知らなかったわ。作品と人格は別物。谷潤もそうだものな。でも、この前妻さんへの行いだけは「ダメな人」だわ。登山家としては素晴らしい人だろうし、紀行文の上手さも『日本百名山』だけで十分に分かる。もしかして、恋い焦がれるように山に魅了されたのは現実逃避の手段だったのかな。2017/03/07
yamakujira
2
「日本百名山」を著した深田久弥の生涯をえがく。北畠八穂との醜い愛憎劇にむしろ人間味を感じるけれど、男としてはサイテーなヤツだったのかな。都合が悪いことからは逃げるような人だったみたいだね。ま、本でも絵でも音楽でも、作者の人間性と作品の優劣は関係ないか。 (★★★☆☆)