内容説明
天下を揺がす仇討に、思いがけずも与することになったのは、柳生道場一の剣客・荒木又右衛門であった。旗本一統の庇護のもと必死で逃走する敵を、知略の限りを尽くして追う又右衛門。幕閣、外様大名、旗本の思惑に翻弄される両者の運命は、ついに伊賀上野で交錯する。世に名高い「鍵屋ノ辻」の仇討である。壮絶な死闘六時間、白刃とともに討つ者と討たれる者の「義」が激突する。
感想・レビュー
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BIN
7
旗本衆のバックアップから人数で勝る河合甚左衛門の作戦とそれを読もうとする荒木又右衛門の頭脳戦の描き方はさすが。また幕府側の視点でせっかく成った天下一統からまた乱世に逆戻りする火種になる可能性があったこの事件を単なる仇討に抑え込んだ幕府の為政者土井利勝の手腕がよく描かれていて、鍵屋の辻の事件の重大さがよくわかる。武士の一分は非常に厄介な論理だが現代社会にはない義の美しさは痛感する。又右衛門に付いていこうとする弟子3人の義は泣けた。2016/08/21
おひゃべりのナオ@【花飛】ヤオイは三月の異名にあらず
3
シナリオ池宮彰一郎・監督工藤栄一の映画が観たい、もちろんモノクロ。2014/11/06
moopee
1
★★★★☆ 泣。助太刀・荒木又右衛門に尽きる。腕と深慮と忍耐と。"武士の本義は「義」の一字である。義はわれを美しくあれと書く"。2017/01/08
青
1
読んでいく上で、「鍵屋ノ辻」が日本三大仇討ちものだと知る。不勉強。最初は同輩間での問題が家を、藩を、そして幕府を巻き込み、大きな問題へとなっていく。群雄割拠の戦国時代から天下太平の江戸時代へ。時代が流れる中で、人びとの意識も変わっていく。「武士」とは何か。「悪」とは何か。「義」とは何か。世代の総入れ替えが終わらぬ微妙な時期故に只の仇討ちとならない深さがある。2013/02/05
siopop
1
鍵屋の辻のあだ討ち事件を、事件だけ見るのではなくて、もっと大局的に徳川幕府の為政者からみた視線が面白いものでした。 鍵屋の辻の事件そのものは知っていても、少し離れた視点から書かれていると見方もまた違ったものに見え興味をそそられました。 もはや歴史の闇に隠れて真相は知りようがないのですが、又衛門はなぜ、どうして亡くなったんでしょうね~、自害、毒殺、はたまた暗殺。2011/11/18